-災害に備え、大切さ提案 「保険の整理箱」サービスも- 「クローバー総合保険事務所」社長 田中大補さん

【「災害の事前・事後の安心のためのサポートに力を注いでいきたい」と話す田中さん=津市栗真中山町で】

 津市栗真中山町の「クローバー総合保険事務所」は昭和38年、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)の代理店として叔父の父にあたる故坂野佐四郎さんが創業した「坂野保険事務所」が前身。平成20年、叔父の故坂野克治さんから経営を引き継ぎ、北・中勢地域を中心に業績を伸ばしている。

 平成27年度、地域活性化に取り組む「三重の働き方改革(ワーク・ライフ・バランス)推進サポート事業」に認証された。今年7月には、BCP(事業継続計画)と防災・減災への取り組みが評価され、内閣府が推進する「国家強靱(きょうじん)化貢献団体」として県初のレジリエンス認証を受けた。

 四日市市楠町で3人きょうだいの末っ子で長男として生まれた。教育熱心な母登代子さん(74)の下、幼少時から書道やそろばん、ピアノ教室に通っていた。面倒見が良く、クラスの皆から「大ちゃん」の愛称で親しまれ、小中高時代は常に学級委員に選ばれていた。

 小4の時、友人に誘われてサッカー少年団に入った。中3の県大会で、初めてレギュラーに選ばれ優勝を果たした。大学卒業までサッカー漬けの日々を送った。「勝つ喜びを知ったことで、厳しい練習に耐えて壁を乗り越える力を養えた。監督や家族に恵まれ、チームワークと継続の大切さを学んだ13年間だった」と振り返る。

 卒業後は、津市の三重ゼロックス(現・富士ゼロックス三重)に入社。四日市営業所に配属され、新規開拓や特約店を担当した。就業後は、同僚に呼び掛けて創部したサッカー部のキャプテンとして練習に励んだ。やりがいのある仕事とサッカーに加えて、同僚だった佳奈さんと結婚して家庭を持ち、長女が生まれ充実の毎日だった。

 そんな時、叔父から「大ちゃんに会社を継いでもらいたい」と頼まれた。経営者になって自身の可能性に挑戦してみようと叔父の後継者になることを決意した。

 7年間勤めた会社を辞め、東京海上火災保険で2年間研修を受けた。生・損保募集人資格、AFP(ファイナンシャルプランナー)の国家資格などを取得、経営学も学んで、クローバー総合保険事務所に入社した。

 入社後は前職で培った営業力を生かし、地元四日市を中心に実績を伸ばしてきた。平成20年、病床の叔父が「会社を頼む」の言葉を残して亡くなり、3代目社長となった。

 叔母と社員、妻と共に、時代のニーズを敏感に捉えながら、顧客の立場となって万一に備えることの大切さを提案している。また、紛れてしまいがちな保険証券や郵便物を収納する「保険の整理箱」を作って法人や個人宅に設置するなど、他社にないきめ細かなサービスが喜ばれている。

 両親と妻佳奈さん(48)、長女うららさん(19)長男壱蕗君(16)の6人家族。「子育てをしながら家庭を守り、仕事面でも支えてくれる妻に面と向かってはなかなか言えないが心から感謝している。居心地の良い家庭が仕事へのエネルギー源です」と照れながら話す。

 「創業から55年。今後は、防災に強い保険代理店として事業継続のノウハウを提供し、災害の事前・事後の安心のための火災・地震保険を提案し、有事の際でも早期に復旧できるサポートに力を注いで100年企業を目指したい」と意欲を見せた。

略歴: 昭和47年四日市市で生まれる。平成7年愛知大経済学部卒業。同年三重ゼロックス入社。同14年クローバー総合保険事務所入社。同20年同社社長就任。同28年県の「働き方改革推進タスクフォース」委員就任。同29年県教員育成協議会委員就任。