津市大門の「辻工務店」は、義祖父の故辻新治郎さんが復員後、昭和21年に創業。荒廃した大門商店街界わいの店舗や住宅の再建に力を尽くした。義父正敏さん(68)の代に設計部門を増設し、設計から施工までを一貫して受注できるようになり、同業他社との連携で大規模建設も手掛けるようになった。
平成30年に義父から経営を引き継いだ。現在は、義祖父、義父が70年余にわたって築き上げてきた信頼と実績を基盤に、地域密着型建設業者として市内を中心に住宅、病院、店舗、ビルなどの設計・施工で業績を伸ばしている。
北海道北斗市(旧上磯郡)で3人きょうだいの長男として生まれた。田舎町で友だちの家が遠く、幼少時は姉2人と家の中で遊ぶことが多かったが、中学時代はソフトテニスに打ち込み、3年の時には渡島(おしま)地方大会を制して北海道大会に出場した。
幼い頃から大工職人の父に憧れ、中学卒業後はすぐに大工修行をしようと決めていた。しかし、父に高校進学を勧められ、5年制の函館工業高等専門学校に入学し、環境都市工学科で土木を学んだ。
函館高専で学ぶうち、より専門的な知識を得たいと思うようになり豊橋技術科学大を受験して建設工学課程3年に編入学。建設と土木の学士・修士課程合わせて4年間の勉学を修め、札幌市に本社を置く建設コンサルタント「ドーコン」に入社、構造部で橋梁設計の仕事に5年間携わった。
大学の同級生だった千代英さんとの結婚を機に妻の実家がある津市に移り住み、義父が経営する「辻工務店」に入社した。上司や協力会社代表らの指導を受けながら現場監督として職人の手配や工程管理を担当するようになった。「現場での仕事が中心になり、慣れない暑さが1番こたえた」と振り返る。
完成した店舗や社屋、戸建て住宅などの施主が、関係者や親戚、知人を招いて、設計から施工まで細部にわたってこだわった箇所を自慢する姿が何よりうれしい。施主の満足度が知人の紹介にもつながっている。平成30年、会長に退いた義父から経営を任された。
妻千代英さんと長男新吾さん(4つ)の3人家族。長男と妻の笑顔が最高のエネルギー源。「休日もないほど忙しい毎日で、働き方改革の真逆を突っ走っていますが、家族と過ごす時間をもっともっと増やしたいですね」と話す。
「義父が掲げた『感動空間創造企業』を目標に、13人の従業員と共に顧客に寄り添い、事業の拡大より地に足を付けた仕事を続け、社会に必要とされる会社にしていきたい」と展望を語った。
略歴: 昭和59年北海道生まれ。平成21年豊橋技術科学大大学院卒業。同年「ドーコン」入社。同26年「辻工務店」入社。同27年津青年会議所入会。同30年「辻工務店」社長就任。同31年津商工会議所青年部入会。