四日市市日永西の「アートクリエーション」は、平成16年に創業。ホテル仕様の食器やベッド、ソファなどの備品を、自宅使いや贈り物にしたいという利用客らに販売している。また、ホテルマンとして30数年間培ってきた知識と経験を生かして、企業の社員や専門学校生への接客・接遇マナーの講師に加え、店舗や住宅のインテリアデザイナーとしても活躍の幅を広げている。
同市富田浜で姉と2人きょうだいの長男として生まれた。幼いころは怖いもの知らずで、映画で見た忍者をまねて焚火を飛び越そうとして失敗し、足に大やけどを負って家族に心配をかけたこともあった。高校時代、テレビドラマ「HOTEL」の主人公が、毎回起こるさまざまな事件を解決する姿に憧れ、ホテルマンを目指した。
入社した四日市ステーションホテルで、ページボーイから清掃係、ウエイター、フロントクラークなどを経て、営業課販売推進室で結婚式や企業の宴会などを勧める営業を担当するようになった。「お客さまからの『ありがとう』の言葉を聞くたびに、ホテルマンは自分にとって天職だと感じるようになった」と振り返る。
昭和52年に同ホテルは閉鎖し、全従業員が新築された四日市都ホテルに移った。副総支配人を勤めていた55歳の時、大阪本社への転勤を打診された。好きな仕事を続けたいという葛藤があったが、高齢の両親を妻に託しての単身赴任は無理だと退職し、独立を決意して起業した。
リゾートホテルの一室を思わせるベランダ付きの広いショールームには、応接セットやダイニングテーブルを配置し、カップボードには品質の高さとセンスが光る和洋食器や小物類を取りそろえ、お客のどんな要望にも応えられるようにしている。「これが欲しかった」「実際に見て、選べるのがうれしい」と喜ばれている。
現在は妻惠美子さん(64)と2人暮らし。長男吉孝さん(41)は四日市都ホテルに勤務するホテルマン、次男誠孝さん(40)は画家で名古屋学芸大講師を務めている。息子たちが家族を連れて帰省するたび、孫の成長する姿に目を細めている。
お互いの両親の介護を4年前に終え、寂しさを紛らわそうと惠美子さんは着物の着付けを本格的に学び、講師の資格を得て指導している。「土・日・祝日も、盆・正月も仕事、たまの休日は接待ゴルフで、子育ても親の世話も任せっきりだった妻には、よく頑張ってくれたと感謝しかない」と話す。今では2人で優雅に外食を楽しむ時間が持てるようになった。
平成28年には、社長業の傍ら10年間指導した四日市情報外語専門学校でのホテルブライダル専任講師の経験を生かし、日本ウェディングプランナー協会認定校「TMブライダルスクール」を開校。働きながら学ぶ学生、転職やキャリアアップを希望する人らの時間に合わせた採算度外視の個人レッスンで、資格取得を応援している。
「今後は、ホテルマンとして身に付けた『真心のおもてなし』を生涯の宝として、地域への恩返しをしていけたら」と語った。
略歴: 昭和23年生まれ。同46年四日市ステーションホテル入社。平成16年アートクリエーション設立。同17年ランドクリエーション設立。同18年料理旅館庄助顧問就任。同27年杉山建築顧問就任。同29年公益社団法人四日市法人会常任理事就任。