空室対策を新事業に 「人の喜びが自分の喜び」 内装、建築工事、建築資材販売「シンワ」社長 伊藤一紀さん

「次世代を担う若者たちに建設業の魅力を伝え、地域活性化につなげていきたい」と話す伊藤さん=桑名市大福で

 桑名市大福の内装・建築工事・建築資材販売「シンワ」は、同市京橋で平成5年に創業した「シンワインテリア」を前身に、同13年に有限会社「シンワ」と社名変更した。工場や商業施設、公共施設などの新築、改修を手掛ける傍ら、昨年からは、新たに空室対策のビジネスモデルに挑戦している。

 桑名市で2人きょうだいの長男として生まれた。幼少時は体が弱く、両親の勧めで小3から水泳教室に通い始めた。練習を重ねることで、記録を大きく伸ばし、小5で出場した市民水泳大会で優勝、県内でも5本の指に入るまでになった。「泳ぐ喜びとともに、体力に自信が持てるようになった」と振り返る。

 光風中から県立四日市農芸高校に進学した。卒業後は手に職を付けて独立しようと、当時、花形だったインテリア業界の内装職人の道を選び、四日市の親方に弟子入りした。壁面のクロス張り、タイルカーペットやクッションフロアの床張りなど、親方や先輩職人のやり方を見て覚えるのが当たり前の厳しい世界での修業が始まった。

 バブル期の好景気のさなか、職人が足りず、納期に間に合わせるために連日のように徹夜仕事が続いた。何度も挫折しそうになりながら、独立の夢をかなえたいと歯を食いしばって耐えた。5年間、人の何倍もの仕事をこなして腕を上げ、23歳で内装職人として独立。自宅で「シンワインテリア」を開業した。

 バブル崩壊後、受注は思うようにこなかったが、協力してくれる修業時代の先輩後輩らのおかげで、数年後には安定した仕事ができるようになった。確かな腕と誠実さで信頼を集め、3人の社員をはじめ、大工、左官、電気工事、解体業など50業者の協力を得て、東海3県を中心に、工場や商業施設、公共施設などの新築や改修を手掛けるようになった。

 6年前、施工現場で落下事故に遭い、10日間の意識不明状態から生還した。約2カ月間の入院生活で、生かされている喜びとともに、支えてくれた全ての人への感謝の思いを胸に刻んだ。社是を「共喜共笑」とし、「これからは人の喜びを自分の喜びとして、いただいた命を誰かのために使っていこう」と決意した。

 昨年11月から、新規事業に乗り出した。「賃貸アパートの空室が40日で埋まる」をキャッチフレーズに、借り手が見つからず、空室で困っている大家さんに賃貸経営成功のノウハウを提案する「リノリースCLUB」(本社「TRN」、福岡県)の企業理念に賛同し、研修を受けてフランチャイズ加盟店となった。

 リノリースは、老朽化して空室になった部屋を、機能性、デザイン性、色彩など、賃貸を希望する20―30代の若年世代のニーズに合わせて、床や壁、照明、間取りなどを改修(リノベーション)して生まれ変わらせる。見違えるようになった部屋の完成図をインターネットで配信して入居希望者を募り、施工工事完了後40日で満室にするというもの。大家さんへの独自のサービスとして、家賃保障もつけている。

 「賃貸経営の悩み解消のための『大家さん塾』開講や、次世代を担う若者たちに建設業の魅力を伝え、興味を持ってもらう体験学習などで地域活性化につなげていきたい」と意欲を見せた。

略歴:昭和44年生まれ。同63年県立四日市農芸高校卒業。平成5年シンワインテリア創業。同12年2級建築施工管理技士取得。同13年有限会社シンワ設立。同年2級建築士取得。同15年社屋移転。同24年桑名商工会議所青年部会長就任。同25年日本商工会議所青年部三重県代表理事就任。