父の遺志継ぎ37年経営 「一つ一つの製品を大切に」 堀田研作所社長 堀田重樹さん

「少しでも良い状態で弟に引き継げるよう、力を尽くしたい」と話す堀田さん=菰野町田口新田の堀田研作所で

 菰野町田口新田の堀田研作所は、日立金属桑名工場の取引会社として昭和37年、父親重栄さんが創業。同53年、22歳で父の遺志を継いで2代目に就任した。

 日立金属向けの配管継手加工業に加え、平成7年ごろからは、神戸製鋼大安工場とも取引が始まり、航空機や新幹線部品の金属研磨加工業も手掛けるようになり事業を拡大してきた。

 菰野町で4人きょうだいの長男として生まれた。幼いころは、近所の子らと昆虫を追い掛けたり、魚を捕まえたりと、自然豊かな地で伸び伸びと育った。家業を継ぐという意志はなく、八風中学から菰野高校に進み、タイヤ製造会社に就職した。

 就職して3年目、父親から「仕事を手伝ってほしい」と頼まれた。タイヤ製造会社を退職して堀田研作所に入社し、父に研磨機械などの操作を教わり始めた。翌年、父が亡くなり、自分が跡を継がなければならない状況になった。

 母満里子さんの励ましに背中を押され、製品の納期を遅らせまいと、従業員らと心を一つにして働いた。「人の上に立つことの難しさを身をもって体験して、初めて父の偉大さを知り尊敬の念を持った」と、22歳当時を振り返る。

 「父がつくった会社を守り、従業員40人とその家族の生活を守っていく。自分にどこまでやれるか、やってみよう」と一大決心をし、人生の目標を定めた。

 24歳で結婚。妻恵子さん(59)が、事務全般を担当するようになった。その後、名古屋市から移転してきた神戸製鋼大安工場などからの受注増を機に、従来からの日立金属向け配管事業部と、神戸製鋼向けのアルミ事業部に分けて精密部品を製造している。

 長年にわたり安全衛生向上に努めたとして、取引企業から授与された感謝状を励みに、「一つ一つの製品を大切に」の精神で、従業員らがきびきびと働く。20年ほど前から、障害者の雇用を積極的に受け入れており、ベテラン職人が丁寧に指導に当たっている。

 「社員の協力があってこその会社。全員が大切な家族です」。恵子さんは、従業員一人一人の体調を気遣っている。「経営を引き継いで37年。困難もあったが、いつも明るく前向きな妻との二人三脚で乗り越えてこられた」と話す。年に1回は夫婦水入らずで旅行を楽しみ、好きなロック歌手のコンサートにも出掛ける。

 専務として支えてくれる弟伸広さん(48)に、会社を任せることを考えている。「少しでも良い状態で弟に引き継げるよう、力を尽くしたい」と笑顔を見せた。

略歴:昭和31年生まれ。同49年県立菰野高校卒業。平成10年大安神鋼くろがね会会員。同22年菰野町商工会理事就任。