34年間勤務した老舗書籍店「白楊」の分社化に伴い、平成15年に独立して「アイテム」を設立し、四日市市安島に文具とギャラリーの店「シェトワ白楊文具館」を開業した。同23年に増床後は、売り場面積約450平方㍍、20万種に及ぶ品ぞろえを誇る県内最大級の文具店となった。
いなべ市で4人きょうだいの末っ子として生まれた。幼少時は友達と川魚を捕ったり、野鳥を捕まえたり、ジネンジョ掘りをしたりと、自然の中で伸び伸びと育った。員弁中、員弁高(現・いなべ総合学園高)時代は、軟式テニスに打ち込んだ。中学では5町対抗試合で優勝、高校ではキャプテンを務め、県大会に進んだ。「共に汗した仲間との交流は今でも続き、当時の話で盛り上がります」と話す。
高校卒業後、第一志望だった白楊に就職し、外商部に配属された。企業や大学、専門学校などを訪問して、定期刊行物の購読や百科事典、医学書などの専門書を売り込む営業に携わってきた。時代の進歩とともに、若年層の活字離れが進み、書籍の売り上げが低迷してきたことから、分社化を機に50歳の時に独立を決意して文具館の経営に乗り出した。
「お客さまが今、何を求めているか」―。常に購買者の立場に立った品ぞろえと、清潔な売り場で気持ちよく買い物をしてもらいたいと、従業員17人と心を一つに笑顔で接客をしている。「文具も生鮮食品と同じです。新鮮な商品を提案することで、飽きずに何度も通っていただけると思う」と語る。
100円ショップの台頭で、売り上げが下がった分は、新たに貸しホールや貸し会議室を設けて事業の拡大を図ってきた。
従業員の「こんな商材も置いたら」「CMで見た折れないシャーペンも」などの意見は積極的に取り入れる。提案した商品が数日後に店頭に並び、自信とやりがいにつながる。「女性店長の下、何でも相談できる、働きやすい職場になっています」と話す。
妻さち子さんと結婚して41年。「仕事人間で、娘たちと遊ぶこともほとんどなかった」と振り返る。今は、高校生になる孫息子の野球の試合を観戦するのが、何よりの楽しみ。「バットやグラブなど欲しがる物は何でも買ってやりたい」と目を細める。
今年8月に65歳を迎える。「この年まで健康で働けたことと、長年、家庭を守り、支えてくれた妻に感謝です。今後は施設への学用品援助や、障害のある人に作品発表の場を無料提供するなどの地域貢献で微力ながら社会に恩返しをしていきたい」と話した。
略歴:昭和26年生まれ。同45年県立員弁高校卒業。同年「白楊」入社。平成15年「アイテム」設立、社長に就任。同年シェトワ白楊文具館開業。同23年店舗増床リニューアルオープン。同24年「セキセイ全国店頭陳列コンテスト」銀賞受賞。