挑戦する心を大切に 結果までの課程が重要 御在所ロープウエイ取締役社長 辻孝已さん

「チャレンジする心が大切」と話す辻取締役社長=三重郡菰野町の御在所ロープウエイで

 三重郡菰野町の御在所ロープウエイは、三重交通(現三重交通グループホールディングス)が観光振興の一環として昭和32年に設立した。同ロープウエイは昭和34年に開通し、今年55周年を迎えた。最高支柱高61メートルは日本一。昨年の乗客数は約58万人。

 家の近くを三岐鉄道北勢線が走っていた影響で、「子どものころは運転手や車掌の姿が、かっこよくて憧れた」と懐かしそうに振り返る。

 小学生のころから野球に目覚め、中高校時代は野球部で内野手として頑張った。高校生の時は主将も務めたことがある。「みんなで一生懸命に一つのことに打ち込めるのが良かった」と野球の魅力を話す。尊敬する選手は長嶋茂雄。

 今でも全国高校野球選手権大会は、毎年の楽しみの一つ。「特定チームの応援はない。弱いチームが勝ち抜いていくのも面白いが、強いチームも強さを見せて勝ってほしいと思ってしまう」と複雑な心境で、球児たちの熱い戦いを見守る。

 愛知大学卒業後は、身近な存在だった三重交通に入社。「子どものころは三岐鉄道を三重交通が所有していたから、余計に親近感があった」と話す。

 入社後は経理業務を中心とした経験を積み、グループ会社の東急ハンズ店長なども務めた。好きな言葉は「為せば成る」。いつもその姿勢で仕事に取り組んできた。「頭で考えて、そこで結論を出すのは好きではない。まずやってみることが大切。やってみないとどうなるかは分からない」

 社長に就任してことしで3年目。現場主義で「生の声を聞くことが大事」と、できるだけ現場に足を運ぶようにしている。「机に座っているだけでなく、現場で情報を吸い上げることが重要」と話す。

 社員とのコミュニケーションも大切にしながら、「チャレンジする心を大事にしてほしい」と望む。「結果ももちろん大切に違いないが、結果に至るまでの過程が重要。頭や体を使ったり、協力してもらったり、そういうことに意義がある」と力強く話す。そして「年を重ねるとどうしても妥協してしまう。だから若い時は冒険していい。そこで責任を負わせようとは思わないから」と優しくほほ笑む。「自分にとっても、そういう経験が財産になっている」と経験に裏打ちされた言葉には、重みがある。

 陽気で話し好きな印象だが、「本当はあがり症。今はそんなこと言ってられないから、腹を決めてしゃべるけど」と照れたように笑う。

 「チャレンジ精神は今も続けている」ともうすぐ訪れる夏休みに向け、山上での工作教室やお天気教室など、子ども向けイベントを幾つか企画した。子ども料金も安くなる。「ロープウエイに『乗るだけ』ではない楽しみ方を提案していきたい。乗客数60万人をクリアするのが目標」と意気込みを見せた。

略歴:昭和29年生まれ。員弁郡出身。51年三重交通入社、平成7年三交クリエイティブ・ライフ取締役財務部長などを経て、平成23年御在所ロープウエイ取締役社長就任。中部鋼索交通協会副会長。