会社と空手の両立 豊かな心養い、顧客満足へ 測量機器メーカー中部特約店「NTジオテック中部」社長 古川尚樹さん

「誠意を持って業務に専心するとともに、武道活動を通して次世代の人材育成を図り、社会貢献をしていきたい」と話す古川さん=四日市市北浜田町の「NTジオテック中部」で

 四日市市北浜田町の「NTジオテック中部」は、土木建設分野の計量機器メーカー、ニコン・トリンブル コンストラクション営業部の中部地区特約専門店として平成21年に設立。愛知県に本社を置き、中部7県で測量・試験機器の販売と技術サポート、レンタル業務を展開している。

 同市西日野町で2人きょうだいの長男として生まれた。幼少時から活発な性格で、小学時代は仲間と一緒に毎日、暗くなるまで外で遊んでいた。中学生のころ、空手漫画や映画で見たブルース・リーに憧れて、空手道場に通い始めた。四日市商業高校に進学後も、勉学の傍ら、2つの空手道場で腕を磨いた。

 卒業後は空手の道に進みたかったが、女手ひとつで育ててくれた母に心配を掛けまいと、姉が勤務していた第一測機に就職した。「事務職なら残業も少なく、空手と掛け持ちできる」と思っていたが、同僚らが真剣に働く姿を見て自身の甘さを痛感し、仕事に打ち込むようになった。その熱意と実績を買われて22歳で役員に推されたことで、より一層の努力を重ねるようになり、25歳の時、空手を断念した。

 平成10年、空手をやっていたことを知る取引先の人から依頼され、鈴鹿市の道場で指導をするようになった。10数年ものブランクがあり戸惑う事も多かったが、胸の奥に眠っていた空手への情熱がよみがえった。それをきっかけに、「チャンピオンになれずに挫折した自分だからこそ、教えられることもある」と確信し、平成16年、仲間6人と共に空手道「優真会」を発足。翌年、NPO法人日本徒手空拳道連盟「優真会」として認証を受けた。

 平成21年、第一測機退職と同時にNTジオテック中部を設立した。「会社と空手の両立」を掲げ、自社ビル1階に道場を併設。現在、幼児から壮年まで約150人の門下生に、何事にも屈しないという空手道の精神「不撓心」と技を伝授している。就業後、男女6人の社員も道場で練習に励む。

 21人の社員には「仕事以外に趣味や目標を見つけて情熱を燃やしてほしい」と話す。それが豊かな心を養い、人間力を向上させ、顧客の満足につながると考えている。また、「障がい者との共生社会」実現にも力を注ぎ、社員と心をひとつに障害者の職場実習を支援している。

 仕事と空手指導で忙しく、休日も家でゆっくりすることがなかった。幼かった長女に「お父さん、また来てね」と言われてがっかりしたこともあった。小2から空手を始めた長男は、大学卒業後に入社して、仕事と空手に励んでくれている。

 「社長として、空手師範として初心を忘れず、誠意を持って業務に専心するとともに、武道活動を通して次世代の人材育成を図り、社会貢献をしていきたい」と語った。

  

略歴:昭和35年生まれ。同53年県立四日市商業高校卒業。平成16年空手道「優真会」発足。同17年NPO法人日本徒手空拳道連盟「優心会」設立、理事長就任。