オーダーに一本化 着こなし講座、アロマも 太田洋服店代表取締役 太田智英子さん

「皆さんに支えられてここまで来た」と話す太田代表取締役=四日市市西新地の太田洋服店で

 四日市市西新地の太田洋服店は、創業明治45年の老舗店。オーダースーツやシャツの注文洋服販売を中心に、「着こなしセミナー」などの講座開設、アロマトリートメントサロンなども展開している。現在で3代目となる。

 3姉妹の長女として、四日市市で生まれ育った。自身の性格をひと言で表現すると、「マイペース」。

 子どものころから活発で、楽しいことが大好きなところは今でも変わらない。友人も多く、「れ周りはみんな友達』みたいな感じ」と屈託のない笑顔を見せる。

 高校時代はフォークソングが流行し、友人ら3人でバンドを組み、ギターを弾いていた。在学中に教師から美術のセンスを見いだされ、進学先の短大では、デザイン美術科で学んだ。

 学生時代はサーフィンやスキー、カラオケなどで仲間たちとよく遊び、ディスコで踊るのも楽しかったと懐かしそうに振り返る。「今でも踊れるけど、きっとえらくて続かない」と苦笑する。

 卒業後は太田洋服店に入社し、事務や接客を中心に任された。短大での経験が生き、25歳くらいの時には、何げなく参加したディスプレーのコンテストで、賞を取った実績もある。転機は47歳の時。代表取締役の座を父親の勝巳さんから譲り受けた。父親は娘が店を継ぐことを望まず、一時は廃業の危機にあった。だが、「応援してくれている人たちもいる」との強い思いから、5歳年下の妹、喜子さんと共に店を続ける決意をした。

 社長就任後は、何も分からないままのスタートだったが、姉妹でがむしゃらに頑張った。まずは、いらない洋服を回収して難民に送る取り組みを始めた。送料がかかるので、上着の背中の部分をくりぬいて座布団を作って販売し、送料に充てた。これまで扱っていた既製品の婦人服販売も、「中途半端になるから」とやめ、オーダー専門店として一本化した。

 地域の経営者を対象にしたセミナーにも積極的に参加し、「時代を察知して先を見ることの大切さ」を実感。今年の流行や着こなし方、顧客に合った色などを助言する「ウォームビズ講座」も始めた。

 「テーラーとして何をすべきかと考えたとき、洋服のきちんとした着こなしやマナーなど、伝えていかなければいけない仕事ではないかという答えにたどり着いた」と和やかな表情を見せる。「20代のころとは全然変わった。あの頃は自分の意思がなかった。今はやりがいもあって楽しい」と、精神的な余裕もできてきた。

 現在は、次男の将司さん(24)が、次期後継者として、名古屋で修業中という。「タイミングを見ていずれ交代したい」と安堵の表情をのぞかせる。

 「周りの人たちのおかげ。皆さんに支えられてここまできた」と振り返り、「今年もみんなで仲良く、楽しく仕事をしていきたい」と朗らかに笑った。

略歴:昭和35年生まれ。四日市市出身。昭和55年太田洋服店入社、平成19年太田洋服店代表取締役就任、現四日市商工会議所女性部副会長。