おいしい漬物つくりたい 千枚漬け、口コミで注文殺到 期間限定漬物専門店「野兎(のと)の里」代表 津田隨子さん

「今後も無添加と手作りにこだわったおいしい漬物を作り続けたい」と話す津田さん=四日市市美里町の野兎の里で

 生産から製造、直売、全国発送までを手掛けるてづくり漬物「野兎の里」を、緑豊かな四日市市美里町で平成11年に創業した。自家栽培をする早生大カブラの収穫に合わせて、毎年11月下旬から3月末までの期間限定で千枚漬け「華かぶら」を中心に、ユズやキムチ風味など5種類の漬物を製造、販売している。

 漬物作りは3男卓也さん(51)が、大きさと甘み、歯ごたえの良さが特徴の早生大カブラの種まきをする9月初旬から始まる。根こぶ病などの土壌病害に細心の注意を払い、直径20センチほどに生育したものから順に収穫をする。ベテラン従業員ら6人が水洗いをした後、作業場で分厚く皮をむき、特性のかんなで5ミリほどにスライスして、塩と交互にたるに仕込む。

 重しを掛けて数時間置き、2―3日酢漬けをした後、米酢、みりん、塩、砂糖、酒をブレンドした秘伝のたれに3―4日漬け込んで仕上げる。「日本一おいしい」「毎年、この時期が楽しみ」など、贈る人、贈られた人らの口コミで注文が殺到する。900グラム入りの千枚漬けを1日平均150袋生産するが、おせち用の需要が高まる年末には生産が追い付かなくなることも多い。

 名古屋市で5人きょうだいの次女として生まれた。終戦前年の昭和19年、家族7人で四日市の開拓地に入植した。原野を切り開いて畑を作り、サツマイモやジャガイモを栽培して生計を立ててきた。畑の草取りを手伝うため、小学校を休むこともあった。「お正月に、おしゃれをして椿神社に初詣に出掛けることが1番の楽しみだった」と、幼少時を懐かしむ。

 戦後、中国から引き揚げてきて農業に携わっていた故■(たむろ)さんと、23歳の時に結婚した。子育てと農作業を手伝う生活の傍ら、収穫したダイコンやハクサイの漬物を作っては親しい人に分けていた。「塩加減など、試行錯誤を重ねた漬物を喜んでもらうことがうれしかった」と振り返る。

 「隨子さんの漬物をもっと多くの人に紹介したら」「お店をやったら絶対買うから」と知人らに強く勧められた。「手伝うよ」と賛成してくれた夫と、「僕が良いカブラを作る」と言ってくれた卓也さんの言葉が背中を押してくれた。「漬物でお商売をするようになるなんて思ってもみなかった」と話す。

 毎年11月20日の発売日を前に、カブラの生育状況や千枚漬け作りの工程などに、手描きのウサギやカブラのイラストを添えた「野兎の里便り」を常連客に送付する。「待ち遠しかった」と、各地から届く注文の電話やメールが何よりの励みになる。

 晩秋から春先に掛けての繁忙期が過ぎると、ほっと一息つく。飼っていた7匹のネコたちとの日々の交流をつづった文集に、孫の萌伽さんが挿絵を描いて自費出版した絵本「猫たち、何を夢みてはしゃいでいたの?」は、家族の思い出の1冊になっている。

 「開店当初から来てくださる方々に支えられて17年目、言葉で言い尽くせぬほどの感謝でいっぱいです。今後も無添加と手作りにこだわったおいしい漬物を作り続けたい」と目を輝かせた。

 ※注:■は軍におおざと
  

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