「過去を振り返らない」 新しい技術や事業を 丸長尾﨑水産代表取締役 尾﨑勝宏さん

「いつも『今』が1番」と話す尾﨑代表取締役=鈴鹿市白子1丁目の丸長尾﨑水産で

 鈴鹿市白子1丁目の丸長尾﨑水産は、白子港で水揚げした魚介類を中心とした水産物加工をはじめ、冷凍魚をアフリカやアジア方面に輸出している。祖父の勝三さんが創業し、現在四代目。

 白子の海をいつも身近に感じながら育った。2人兄弟の長男で、いつも元気でわんぱくな子どもだった。「泥棒ごっこをしたり、外で遊ぶことが多かった。中学の時は野球部に所属していた」と振り返る。

 「魚を運んだり、さばいたり。小さいころからずっと家の手伝いをしてきたから、自然といつかは自分が跡を継ぐのだと思っていた」と話す。忙しく働く両親の姿をいつもそばで見てきた。

 力仕事も多く、大変な仕事だと分かっていたが、「人に使われるのは嫌い。他の仕事は勤まらないと思った」と高校卒業後に入社。「お客さんに喜んでもらえた時に、1番のやりがいを感じる」と一生懸命働いてきた。

 「漁港に最も活気があった」とという昭和57年―平成2年は、睡眠が3―4時間ほどの忙しさで、「眠くてどうしようもなく、立ちながら寝た記憶がある」と苦笑する。

 38歳で社長に就いてからは、色彩選別機やコンピュータースケールを導入し、手作業だった仕事の機械化を進めてきた。あまり役に立たない物もあったが、「設備投資は大事。やっぱり新しい技術は違う」と、失敗も豪快に笑い飛ばす。

 「時代の流れをみながら、新しいことを取り入れる」姿勢は、昔から変わらない。五年ほど前から始めた冷凍魚の輸出も、今では売り上げの半分を占める。

 「いつも『今』が1番。過去を振り返ったらあかん。『あの時は良かった』と思うようになったら終わり」と、常に前向き。

 会長の父親、八(わかつ)さん(81)からは、誠実さと人間性を学んだ。「商売を長続きさせるには信用第一」と語る。「信頼関係がきちんと築けていれば、お客はちゃんと付いてきてくれる」

 長男の修一さん(27)は入社5年目。いつの間にか立派な片腕として心強い存在に成長した。「次世代まで伊勢湾の漁が残せるように、できることをしなければ」と使命感も出てきた。現在は、若い漁師がもっと増えるように、魚価の安定や水揚げ増加に協力している。

 好きな言葉は「情けは人のためならず」。面倒の良さから頼られることも多いが、「まだまだ人生5合目付近」と笑った。

略歴:昭和34年生まれ。鈴鹿市出身。昭和53年同社入社、平成9年代表取締役就任。