─食を通じて地域つなぐ─ 「季節ごはん教室niwacoya」主宰 柵山咲子さん

【「食を通じて地域をつなげたい」と話す柵山さん=菰野町千草で】

「季節を感じる暮らしをお料理から」をコンセプトに平成25年、東邦ガス料理教室の講師を務める傍ら、女性限定の料理教室を自宅で始めた。同30年、庭の一角の事務所をキッチンアトリエに改装し、週3―5回、旬の食材を使った家庭料理を指導している。

大きな三角屋根に薪ストーブの煙突のある英国風の自宅、四季折々の草花が咲くイングリッシュガーデン一角の農作業小屋をイメージしたキッチンアトリエのたたずまいは、さながらピーターラビットの絵本の世界のようだ。

インターネットや口コミで参加希望者が殺到し、「予約が取れない料理教室」として大人気になった。参加者らにとって妻や母の役割から離れ、1人の女性として自分らしく過ごせるひとときを楽しみ、その幸せを周囲に波及させていく場になっている。

献立は2、3、4月が春のメニュー、6、7月は夏、9、10月秋、11、12月クリスマス料理となっており、年に4回メニューが変わる。1月と8月は休講、5月はマルシェイベントがあり、12月にはおせち料理教室もある。1回の定員は6、7人、毎年4回全て受講する生徒は北勢地域を中心に160人ほどで、参加希望者はキャンセル待ちの状態だという。

「野菜が主役のXマステーブル」と題したクリスマスメニューは、「豚肉のマスタード煮込み」「白ネギの和風グラチネ」「白菜豆乳チャウダー」「ほうじ茶のバスク風チーズケーキ」など7種。参加者らには、まず自己紹介と、それぞれお勧めのカフェやレストランのお勧めメニューなどをシェアし合って親しくなってもらい、一緒に調理の手順やポイントを学ぶ。

参加者1人1人に、デモンストレーション形式で調理してもらい、全員が全てのメニューに関わり、自宅でも再現できるように配慮する。食材は、生産者の顔が見える旬の地元野菜、肉、魚介類などを選ぶ。食卓の食器も地場産の萬古焼や町内の漆器職人による箸などをそろえ、料理に合わせたテーブルコーディネートをしている。

参加者らは、できあがった料理をゆっくりと味わいながらおしゃべりを楽しむ。後日、「おいしいと家族が大喜びでした」と、参加者から届く写真付きの「作ったよメール」が何よりの励みになっている。

四日市で3人きょうだいの長女として生まれた。幼い頃から、料理好きの母の手伝いをするのが好きだった。四日市商業高校の3年間はギター・マンドリンクラブでコントラバスを担当し、全国大会出場や各地での公演活動など貴重な体験ができた。また、銀行や企業を訪問して協賛依頼をすることも良い社会勉強になったと言う。

卒業後は総合化学メーカー「東ソー」に入社。プラスチック原料などの配送手配をする物流部に配属された。入社から2年目、休暇を取って友だちと2人でアメリカに旅行した。「言葉で尽くせないほど雄大なグランドキャニオンの夕日を見て、何の苦労もなしに生きてきた自分の人生を振り返り、自力で何かに挑戦してみよう」と決意し、進路を模索し始めた。

食の世界に進もうと決め、22歳で退職。名古屋市立栄養専門学院で2年間学び栄養士の資格を取得後、「キユーピー」名古屋支社に就職した。主に病院・施設向けのブランド「ジャネフ」などの医療用食品の企画・営業に携わり、その間、管理栄養士資格も得た。家庭料理について、より深く知りたいと思うようになり、28歳で転職、東邦ガス料理教室のアシスタントとして働き始めた。

ある時、友人から家で教えてほしいと頼まれたのをきっかけに、自宅キッチンで料理教室を開くようになった。その後、造園会社を経営するガーデンデザイナーの夫の協力で、自宅庭の事務所をキッチンアトリエに改装した。

大学生の長女は県外に、夫直之さん(52)と次女、三女、2歳の黒シバあんずと暮らしている。あんずを中心に会話が弾み、笑顔が絶えない。「家庭は一番安らげる場。家族旅行はワンちゃんOKのホテルを探して皆で楽しむ」と言う。

「今後は料理講師の横のつながりをつくって共に学び合いたい。食材ロスを減らすなど、環境問題を意識して台所から発信するSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みと、萬古焼やかぶせ茶など県ブランドの魅力を発信することで地域をつなげ、社会貢献ができればうれしい」と語った。

略歴:昭和50年生まれ。平成5年県立四日市商業高校卒業。同年「東ソー」入社。同11年名古屋市立栄養専門学院卒業。同年「キユーピー」名古屋支社入社。同15年東邦ガス料理教室入社。同25年「季節ごはん教室niwacoya」開業。

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