─地域の菓子文化の発展目指す─「もちもち草もち ひで吉屋草餅本店」社長の佐々木慎二さん

【「お菓子の魅力を広く伝えていきたい」と話す佐々木さん=菰野町大強原で】

菰野町大強原の「もちもち草もち ひで吉屋草餅本店」は、菓子製造・販売店の次男に生まれた父英吉さん(89)が、昭和51年に「佐々木製菓」の屋号で創業。湯の山温泉街の宿泊施設向けに菓子の卸売り販売から始めた。

同61年に発売した「草もち」が大ヒットし、平成元年に湯の山から現在地に本社を移転、翌2年に父から経営を引き継ぎ、法人化した。同10年には工場横に店舗を建て、「もちもち草もち」の商品名を付けて製造卸に加え直売も開始した。

菰野町で3人きょうだいの長男として生まれた。4歳で小児気管支ぜんそくを発症し、たびたび発作を起こして両親に心配をかけたが、アレルギー体質の改善で小4の時に治まった。中学ではバスケットボール、高校時代は仲間とバンド活動に夢中になった。

両親から家業を継いでくれと言われたことはなかったが、長男である自分が継ぐことを自然に受け入れていた。卒業後は、昔、父が修行した名古屋市の老舗和菓子店「松河屋老舗」に入社。あん玉を丸めたり、まんじゅうを包んだりと比較的簡単な作業をしながら、ベテラン職人らの高度な技を見て学んだ。

4年後、父から「湯の山の旅館やホテル向けの茶菓子や土産物の取引が、好条件を提示する大手の参入で減ってきた。何か新商品を考えてほしい」と言われ、実家に戻った。日々の菓子作りの傍ら、そばまんじゅうや鹿の子まんじゅうに代わる主力商品をと、試行錯誤を重ねた。4年がかりでようやく納得できる草もちを完成させた。

従業員は21人。最新の設備を整えた衛生的な工場で、従業員らと早朝から仕込みに入る。出来上がった商品は営業担当者らが手分けして各所に配送する。

現在は大山田、御在所、亀山、安濃など県内の高速道路サービスエリア、パーキングエリア、道の駅など12カ所、大手スーパーなど15店舗、湯の山温泉の宿泊施設などに1カ月約10万個の草もち、草団子を出荷している。配送時間に合わせて買い求めに来る常連客も多いという。

本店では主力の草もちのほか、桜餅や柏餅などの季節菓子、生クリーム、粒あん、栗の3種のドラ焼き、いっぷく団子、もちパイ、春から秋には草もちソフト、焼き菓子のギフトセットも提供している。「お土産に喜ばれる」「家族皆が大好き」など、お客様の声を直接聞くことができ、従業員一同の励みになっている。

経理を担当する妻と営業担当の長男との3人暮らし。結婚して町内に住む次男は、菓子職人修行を経て製造を担当しており、新商品の開発にも力を入れている。「仕事も家庭も守り支えてくれる妻には感謝しかない。息子たちが共に頑張っているのがうれしい」と話す。

昨今の人件費や材料費の高騰で、やむをえず商品の値上げに踏み切ったが、草もちを喜んでくださる多くのお客様のおかげで、コロナ前の売り上げに戻ってきた。「今後は地域の菓子文化の発展を目指し、お菓子の魅力を広く伝えていきたい」と意欲を語った。

略歴:昭和35年生まれ。同54年県立菰野高校卒業。同年「松河屋老舗」入社。同58年「佐々木製菓」入社。平成2年有限会社「佐々木製菓」社長就任。同29年県菓子工業組合副理事長就任。

略歴: