―信頼と実績「継いで良かった」― 不動産の総合コンサルタント「株式会社アポロ」社長 宮﨑城治さん

【「これまで以上に頼られる不動産屋になりたい」と話す宮﨑さん=鈴鹿市国府町で】

鈴鹿市国府町の「アポロ」は、祖父の故秀三郎さんと父の故勇さんが昭和47年に同市算所で創業した「宮﨑商事」が前身。同63年に父が現在地で起業した。平成19年、会長に退いた父から経営を引き継いだ。

「顧客第一主義」をモットーに、不動産の売買、賃貸仲介、管理、開発企画、コンサルティングなどを手掛けている。鈴鹿・亀山を中心に地域のお客さまに寄り添い、信頼と実績を積み重ね、業績を伸ばしている。

以前、産廃処理会社の業務拡張に伴う移転の相談を受け、市街化区域で近隣住民らの理解を得られる物件を依頼者とともに探した。候補地の周辺住民への説明会を開き、意見や要望に耳を傾けながら5年の年月をかけて、土地の選定ができた。

その後、産廃業に関する県の設置・建築許可、市の開発許可や排水処理などの許認可手続き完了までさらに2年、ようやく社屋建設に着手することができた。社屋が完成した後、社長から「構想から10年で念願がかなった。アポロさんのおかげです」と涙ながらに感謝された。「不動産業の仕事名利に尽きる言葉。共にハードルを1つずつ越えながら実現できた」と振り返る。

鈴鹿市で3人きょうだいの次男として生まれた。漫画「キャプテン翼」が大好きで、小3からサッカーを始めた。中3の時、副キャプテンとして出場した市大会で優勝し、県大会に進んだ。津高でも3年間サッカーに打ち込んだ。

父から「次男だから好きに生きろ」と言われ続けてきたため、家業を継ぐことを考えたことはなかった。慶應義塾大に進学し、経済学部で学ぶ傍らサークル活動でサッカーを続け、アルバイトにも精を出した。3年の夏、欧州4カ国を旅した。「各国の歴史や文化、人々との触れ合いで視野が広がり、日本の良さを再確認できた貴重な2週間だった」と振り返る。

卒業後は、「東急不動産」に入社し、宅地・戸建やマンションの開発部門に携わった。入社から8年後、父から「継ぐ気はあるか」と打診されて悩んだ末、2年後にようやく家業を継ぐ決意を固めた。

アポロに入社した当日から父は出社しなくなり、仕事の引き継ぎもほとんどなく、いきなり代表を任されて戸惑い、眠れない日もあった。「3年やって駄目ならやめよう」と腹をくくり、前職で培った知識を駆使して新規の顧客開拓に奔走した。

1年後にようやく手応えを感じられるようになり、その後は徐々に仕事が増え、口コミでの紹介も増加した。「父の仕事を継いで良かった」と実感できるようになった。

1人息子の悠河さん(22)は東京の大学を卒業後、IT企業に勤務しており、今は事務を担当している妻夕帆さん(50)と、愛犬政宗と暮らしている。「休日は妻とゴルフや映画を楽しみ、家では次男のような政宗が夫婦の会話を盛り上げてくれる」と話す。

積み重ねてきた信頼と実績、高齢化による同業者の閉業も相まって相談者が増えてきた。「常に顧客第一のスタンスを忘れず、これまで以上に頼られる不動産屋になりたい」と熱く語った。

略歴: 昭和49年生まれ。平成8年宅地建物取引士資格取得。同9年慶應義塾大学経済学部卒業。同年「東急不動産」入社。同19年「アポロ」入社・社長就任。同31年賃貸不動産経営管理士資格取得。令和6年県宅地建物取引業協会副会長。