―住みやすい三重に― 「高原社会保険労務士事務所」代表  高原祥子さん

【「住みやすい三重にするために力を注いでいきたい」と話す高原さん=津市河芸町で】

「経営者と従業員の両方が幸せになる職場づくり」を目標に掲げて平成27年、津市河芸町で「高原社会保険労務士事務所」を創業した。現在は、県内の企業を中心に、顧問として人事・労務の管理業務全般の相談に応じている。

近年の労働基準法や労働安全衛生法、育児・介護休業法などの改正に伴って、就業規則の見直しを企業に提案している。社員の入・退社時の社会保険、雇用保険の手続き、また、労災保険の申請手続きも手伝っている。「相談にいつも的確に応えていただいてありがたい」と経営者らに喜ばれている。

保育園の経営者から、職員のモチベーションを高めてほしいという要望があり、研修会を開いた。グループワーク形式で、①「仕事のやりがい」②「職場の良いところ」③「こうすればより良くなる」の3点について意見を出し合ってもらった。

「忙しさに追われる日々の仕事を見つめ直せた」「IT(情報技術)化で業務効率を上げたい」「職員間の情報共有の方法を見直したい」などの意見を取り入れ、パソコンやタブレットなどの導入を勧めた。「目の前の子どもたちとの時間に集中できるようになり、保育の仕事がより楽しくなった」「職員同士の連携がスムーズになった」など、うれしい声が届いた。

名張市で2人姉妹の長女として生まれた。幼少時から活発で、小学校ではいつも学級委員に立候補していた。小3から、友達と一緒に地域のスポーツ少年団でバトントワリング、名張中と津高の6年間はソフトテニスに打ち込んだ。

京大法学部に進学、人生初の1人暮らしが始まった。勉学の傍ら、家庭教師や飲食店でのアルバイトも経験し、親しくなった友人らと買い物や食事を楽しみ、時には夜遅くまで語り合って親睦を深め合った。「今でも時々会って近況を話し合い、変らぬ笑顔にパワーをもらっている」。

卒業後は教育系出版社の名古屋支社に入社。愛知県内の高校を回って、教材・模試の活用促進や大学入試情報などを伝える営業、アルバイトスタッフの労務管理などを11年余り担当した。在職中、結婚して子ども2人を出産した。

長男と長女2回の産休・育休の期間中、何か資格をと思い立ち、当時、人気資格ランキングで上位だった社労士を通信教育で学び始め、2度目の挑戦で社労士資格を取得した。3人目の出産を前に退職、しばらくは子育てに専念したが、自宅でできる仕事を始めたいと思うようになった。

社労士の資格を生かそうと、事務所開業に必要な備品や宣伝方法をインターネットで調べ、準備を整えた。子どもたちの世話を手伝ってくれる義母の協力が何よりありがたかった。

ゼロからの出発だったが、在職中の営業経験が役立った。子どもと関わる教育現場のお手伝いをしたいと、津、鈴鹿、亀山市の私立保育園をリストアップして事務所の案内と手書きの手紙を郵送後、電話であいさつをすることから始めた。

お断りが多い中、「社労士さんを探していた」「相談したいことがある」などと喜んでくれる所を訪問。継続的にお手伝いができる所が増え、口コミや同業者からの紹介もあり、2年ほどで仕事を軌道に乗せることができた。

開業から2年目、愛知県などが主催した異業種交流展示会「メッセナゴヤ」で、「ワークライフバランス」をテーマに、社労士の認知度向上を図るセミナーの講師を務めた。参加した経営者や人事・総務担当者らから好評を得た。これがきっかけとなり講演依頼が届くようになり、仕事をしていく上でのターニングポイントとなった。

その後、女性だけの異業種交流会メンバー7人と、女性の起業を成功に導くための「Mie女性起業支援室」を発足させた。令和元年には、女性起業家同士の交流と学び合いを通して、共に事業を発展させるための県女性起業家コミュニティー「Wiz:」の創設にも関わった。

高校の同級生だった夫(43)と長男(14)、長女(11)、次女(9つ)の5人と、いつも皆を笑顔にしてくれる2歳のシバイヌ福ちゃんが家族。「長男の野球を応援し、娘たちとテニスを楽しみ、夫と晩酌をするひとときがリフレッシュタイム」と話す。

令和4年度「みえの輝く女子プロジェクト」事業では統一コーディネーターとして全体の進行役を務め、本年度の事業にも関わっている。「県内に働きやすい会社を増やすことで若者の県外流出を防ぎ、Uターンを促進し、住みやすい三重にするために力を注いでいきたい」と熱く語った。

略歴:昭和54年生まれ。平成15年国立京都大学法学部卒業。同年教育系出版社入社。同27年「高原社会保険労務士事務所」開業。同31年三重働き方改革推進支援センター専門家登録。令和2年津市ビジネスサポートセンター経営相談員就任。

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