有機ELの話

 これから2回に分けて、有機ELと電子ペーパーの最近の動向を報告します。
薄型テレビ、デジタルカメラ、カメラつきケータイ電話、の次に来るものを探りたいからです。

 有機ELとはなにか。

 有機ELとは「ガラスやプラスティックなどの上に有機物を塗布し、そこに電気を通すと有機物がきれいに発光する」というものです。
実は、蛍の発光など自然界に既に存在している「有機の光」を人工的に生み出そうという技術です。
これは太陽光発電の逆をおこなっているものだとすると、理解しやすいのではないでしょうか。

 それで何ができるか

 私たちが日常使っているテレビ、パソコンや携帯電話のディスプレイ、さらには家電製品の表示パネルなどに使用できます。
それらの製品の多くは現在、液晶パネルでまかなわれている次第ですが、有機ELは液晶に比べてはるかに美しく、液晶とは比較にならない究極の薄さを実現できます。

 さらには、液晶の欠点でもある視野角の制限もありません。生産コストは液晶より安いです。
液晶とならび称されるプラズマ・ディスプレイも、有機ELの極薄さに比べれば、重厚長大な商品にさえ見えるという関係者もいるほどです。

 実際、有機ELを使えば「紙より薄いディスプレイ=電子ペーパー」ができます。これはフイルムのようなものですから丸めて持ち歩けます。

 照明としても使える。

 エジソン以来の大発明という人もいます。これまでの白熱灯を点光源、蛍光灯を線光源とすれば、有機ELの照明は「面光源」だからです。面そのものが発光する。だから天井に貼り付ければ照明となり、きわめて明るい。車に使えば髪のように薄いのでトランクも有効に使えるとされています。

 競争してくる国は?

 これは日本オリジナルの最先端テクノロジーであり、現時点では他国を圧倒的にリードしています。
2010年までには、たわわな果実が収穫できるのは間違いないでしょうが、韓国、台湾も迫ってきているようです。
以前にも、NECが有機EL事業を合弁先の韓国のサムスン社に売却したニュースが入りましたね。

 実は技術的障壁があります。それは大きく分けて二つ。製品寿命と製造コストです。

 今回は関係企業を列記します。
ソニー(6758)、三洋電機(6764)、TDK(6762)、東芝(6502)、東北パイオニア(6827)、ローム(6963)、大日本印刷(7912)、凸版印刷(7911)

 印刷会社がリストに入っているところにこの技術の特異性があります。といいますのは有機ELは化学と工学の両方にまたがった盲点であったのです。

 工学系の研究者も苦手な「亀の子の化学式」が必須であり、具体的な製品に仕上げるのは化学者のおぼつかないところです。
もっとも困難な分野にチャレンジしなければ独占的利益は得られません。

 数年後に成功するのはどの企業でしょう。楽しみな投資です。