光ファイバーとうどん

 時間を味方にする。

個人投資家が機関投資家に勝つ方法はひとつあります。それ以外の道は、本業に差しさわりができる故に難しいといえます。
時間を味方にする人は、株式マーケットで強いといえます。しかも、時間ほど平等な資産はありません。どんな財閥の社長も(その財閥がいずれも苦難の経営に陥っている!)、零細商店の店主も、一日は二十四時間しか与えられていません。ハーバード大学でMBAをとったいわゆるエリート社員でも、地元の高校中退の商店員でも、天は二十四時間しか与えません。

時間だけは平等だ。

大企業・機関投資家は、豊富な資金を運用して増やそうと、株式市場に乗り込んできます。すべての優位は彼らにあります。情報・調査力・各種先端情報機器・手数料無料・豊富な資金。にもかかわらず、なぜ彼らの主宰する投資信託・MMFは無残な元本割れをひき起こしたのでしょう。

米国の世界屈指の一流大学大学院を出て、金融工学もデリバティブも自家薬篭中のものとした、株式市場のベストアンドブライテストのみなさんが、商業高校出の豆腐屋ゲンちゃんの年間パフォーマンスに遠く及ばないのはなぜでしょうか。念のために申し上げておきますが、本文は証券会社を貶める(おとしめる)のが本意ではありません。素朴な疑問を呈しているのです。

いわゆるアナリストたちは、端整な顔立ちで理路整然と、ルーセントテクノロジーが如何に卓越した通信系の企業であるかを説き、シスコシステムズが合併に継ぐ合併でいかに急成長しているか、しかも人間を如何に大事にする超優良企業であるかを、紹介し投資家に勧めてきて、その結果が株価五分の一とは、「なんじゃらほい」と言いたくなるのは私一人でしょうか。

某日、小生は三重県桑名市近郊の、いがぐり頭の豆腐屋ガンちゃんの工場を訪れました。手土産持参で辞を低くして、教えを乞うジャーナリストにけんもほろろでした。

「誰に聞いてきた。わしは株などやってない。」
儲けている人の常で、徹底的に隠して教えてくれません。

桑名市伝来の株式必勝法とは

桑名市にいるという豆腐屋の投資家の話を聞いたとき、非常に興味を覚えました。と申しますのは、桑名市は伝統的に相場師を輩出する土壌があると言われてきたからです。今をときめく松井証券の創業者は桑名市出身です。日露戦争と第一次大戦で、今の金で一千億円儲けて、上京して松井証券を起こしたのは兜町に生きる者で、年配の方なら知らぬものはありません。近くは商品相場で全国に名をとどろかせた坂崎喜納人氏。あるいは、隣の市の四日市倉庫(現トランスシティー)を起こした小菅剣之介も相場で当てて倉庫業を始めたのです。

新しい三階建てビルの一階の一部を豆腐工場にして、娘夫婦と二世代で暮らしていました。ガンちゃんのお宅は噂どおり裕福さがうかがわれました。

ガンちゃんが小生を受け入れてくれるようになった経緯は、おいおいお話します。
店売りはせず、大手工場の食堂と、スーパー/デパートに卸している六十三才の主人ガンちゃんの株式投資法は驚くべきものでした。ガンちゃんがなぜガンちゃんと呼ばれているかを、私はいやと言うほど知らされることになるのです。(続く)