伊藤の定理(伊藤のレンマ)を導いた、伊藤清京都大学名誉教授が2008年に他界されました。93歳
文化勲章を受賞された際も、氏について書きかけて止めましたが、個人的な接触もありますので、今回は記してみます。
マイロン・ショールズとロバート・マートンがノーベル賞を受賞した際、「伊藤の公式」のおかげだと発言しました。
彼らの授賞理由は、ブラック・ショールズ式を導き、デリバティブ理論の発展に貢献した、というものですが、これはほとんど伊藤の定理の応用であります。基礎的な理論は伊藤先生が構築済みのものです。
本来なら、伊藤先生も同時受賞していても当然だったのです。代わりにというか、2006年にガウス賞を受賞されましたが。
それにしてもUSA側の、伊藤氏が東京都新宿区戸山町にいまもある国立統計局勤務時代の1942年に、仲間うちの勉強会で、配ったガリ版刷りの数枚のプリントを手に入れていた情報収集力は見上げたものです。
しかし、この定理が、ロングターム・キャピタル・フアンドを結成させ、破たんさせ、サブプライム・ローンを嚆矢とする金融商品を破綻させる、お墨付きのご誓文となったとは。
伊藤清京都大学名誉教授は、三重県鈴鹿市神戸町のご出身です。
ロングターム・キャピタル・ファンドが破たんし、「ノーベル賞受賞者が二人もいて何だ」の声が出ました。その節、インタビユーを申し込みましたが、既に高齢で具合が悪いとのことで、実現しませんでした。
二つ目は、「株式相場、原油、穀物等々の商品市況高の資金というか種銭に使われていたマネーはジャパンマネーであったといわれています」 いわゆる、円キャリートレードと称するものです。世界一低金利で円安の日本の金融機関から「円」を調達し、欧米で運用していたというものです。
何より証拠に、日本もトヨタショックをはじめとして、ソニー、キャノン等の欧米向け輸出が大幅減になる見込みなのに、「円高」が進行している現実が何事かを語っています。(道理で国内企業に資金が回ってこないわけです)
全治4年とも5年ともいわれる不況は始まったばかりです。不況に強いといわれる新聞業界も、広告費の大幅な落ち込みに悲鳴を上げています。
しかし、私は技術革新前の産みの苦しみだととらえています。薩長が政権奪取するためには、大政奉還という儀式では何も変わらず、「いくさをしもうす」で諸大名を武力で制圧したように。
今後も、バブルと恐慌はつきものだと論じる学者もいますが、それは科学とテクノロジーの進歩、創造的進歩がない場合、という留保がつけられるべきです。
サブプライムローンやデリバティブ債権等々の詐欺的商品は、成長を志向しながら成長を満たす原動力となる科学とテクノロジーの創造がなかったことも原因の一つであります。
新聞業界も、科学とテクノロジーの進歩の導入を欲しています。それにはあと数年を要します。