マネー・インベストメント

『歳月本長 而忙者自促 天地本寛
而鄙者自隘 風花雪月本閒 而勞攘者自冗』

「歳月は元来、永久無限なものだが、心にゆとり無く、せかせかと暮らしている者は、自らこれを短くしてしまう。天地は本来、広大無辺で、広いものだが、心の卑しいものは、自らこれを狭くしてしまう。春の花、夏の風、秋の月、冬の雪、これらは由来、人間に眺め楽しむべき閑暇を与えるものであるが、常に齷齪(あくせく)している者は之をしも煩わしいものとしてしまうのだ」

『ポケット菜根譚』 五島慶太著による

 八年ほど商社マンとして外国勤務していた友人が、一昨年の三月に帰国して本社の要職につきました。五月にゴルフしましたところ、

「なんだ、なんだ、東京に帰国したらみんな元気が無くて、髪の毛は白くなって、禿げて、うつむいて歩いていて。どうなってんだ。こりゃあ」
「商店街はゴーストタウンみたいになっているし・・・」

とすこぶる元気です。
小生が驚かされたのは、

「俺もそろそろ、十億円ぐらい貯まるから、おぬしもそれくらいはとっくに持っているだろうから、なにか買収する案件は無いか」 とのたもうたことです。
大丈夫かくあるべし、と友が頼もしく思えました。

 もとより、小生にそれほどの貯えがあるわけは無く、彼も口は達者な典型的な商社マンですから真実のところはわかりません。
ただ、それだけの台詞(せりふ)が吐ける男があまり見あたらなかっただけに新鮮さとともに、ATTRACTIVE(魅惑的)なものを感じました。彼の投資法はここ十年来聞いていますから、折にふれ紹介していきます。

 長年、輸出入に携わってきただけに為替の読みについては一家言があります。メキシコの突然のペソ切り下げの際には、彼の上司の独断による為替予約のおかげでメキシコ現地法人は千億円の損害を回避して無傷でいられたのです。そのとき千億円の損失を出したのがメキシコ日産でした。メキシコ政財界への独自のチャンネルによる情報と気配で、確信がもてないまま、

「どうもおかしい。ひょっとしたら」

 と予約に踏み切ったそうです。ちなみに上司はメキシコ・シティきっての麻雀打ちだといわれています。私もメキシコ滞在中に誘われましたが、とても及ぶところではないと辞退しました。メキシコ・シティは日本の乗鞍山中ほどの海抜2,400メーターです。酸素不足と旅の疲れで、勝ち目は無いです。酸素ボンベで吸入しながら麻雀するつわものもいるらしいですが・・・

商社マンから見た為替

 「為替ほど難しいものは無い。為替で儲けることは不可能だ。ドルの売り買いで儲けることができるのなら、財閥系商社であるうちは系列の銀行も持っているのだから、何千億円でもドルを買いますよ。為替など明治時代から取引しているのだから。儲からないのです。だから、アフリカの奥地まで服地を売り込みに行き、油田開発、ブルドーザー売り込みに、テロの危険を冒して、命がけで現地へ赴くのですよ」と彼は言います。今後も彼の発言をウォッチしていく予定であります。