東京都武蔵小金井市にあるサレジオ学園を訪ねてみました。
六歳から十八歳までの男児養護施設であり、キリスト教系財団の運営になります。
坂倉建築研究所東京事務所の設計によるこの建築は一九八九年に完成しています。
前号の世田谷区立美術館と同様に、建設委員に任命されたPTA会員に美術大学を卒業された方が見えて、設計者と対話に次ぐ対話と議論を交わしたそうです。この学園の生徒に言わせると
「おじちゃん達とおばちゃん達、また朝までお仕事(打ち合わせ)やっていたよ」
ということだったようです。
ちなみに、前号の美術館で活躍された女史も、この学園で奮闘された才媛も同じ美術大学を卒業されているようです。女子美術大学という学校です。
子供達を最高の環境で育て学ばせたいと腐心すればするほど、限られた文部省の予算では建設不可能になります。寄付金集めに奔走するとともに、当時の文部省に直訴までして資金を確保したそうです。
設計者と保護者の苦闘はマリア像の製作者も動かしました。ドン・ボスコ記念聖堂のあちこちに見られる匠の技は、宗教的情熱が昇華したものといえましょう。これでもかこれでもかというほどのデザインの粘りを感じます。しかし、押し付けがましい、あくの強さは感じません。洗礼を水で行う関係か、水の上に立つ小聖堂もある建築群です。