エル・リコな時間・空間・建築

4層吹き抜けの1階部分は学生食堂です。中2階と中3階にコーヒーラウンジがあります。屋根部分は全面的にトップライトとなっています。

☆ チューリッヒ大学学生食堂・教室

 今回は海外を訪れることにします。読者の記事に対する要望のひとつに、「団体のパック・コースでは行けないリッチなスペースを訪問した記事が見たい」というものがありました。折に触れ、海外も取り上げていきたいと思います。第一回目はチューリッヒ大学です。
チューリッヒ市は人口三〇万人。日本人にはある意味有名なクレディ・スイスグループの発祥の地です。

 「世界中どこの国にもあって日本にだけ無いものは何か」

 という問いかけをなされたら、読者の皆様はなんと答えられるでしょうか。いろんな答えが考えられますが、ひとつの答えは

 「階級(クラース)」

 ということではないでしょうか。

 「日本の大学とヨーロッパの大学は根本的に違う」

 案内してくれた同大学OBの弁護士が守衛を呼びつけて、私が見学するために、教室のかぎを開けさせる光景を見て痛感しました。

ご存知、サモトラのニケが飾ってあります。

教室。豪華さが写真から伝わるでしょうか。写真左上のスペースはお偉い人が来たときのものだと思われますが、案内者によると、「遅刻するとあそこに放り込まれる。遅刻者のための席」だそうです。

☆ 財を築く株式投資 イヤー・トレードの勧め

 エル・リコのマネーアンドインベストメント版の編集方針は財産を築く株式投資ということです。月5万円から10万円儲かれば良いという人は読者対象にはなりません。そういう方は競馬かパチンコでもやることを勧めます。いわゆるデイ・トレードより効率的だと言っておきます。それは儲かるという意味ではありません。勝ち負けがはっきり、すぐにわかるということです。たいてい負けますが。イヤー・トレードとは数年に1回株式を売買するという意味です。

 寺山修司という詩人は「勝って喜び、負けて悔しがるのが競馬フアンの楽しみだ。」これまでの戦跡をトータルすると勝っていますかという質問に答えてエッセイでこう書いていました。競馬なら負けることの哀感もほろ苦く楽しめるかもしれませんが、株式投資では負けると腹が立つことが多いのではないでしょうか。夜も眠れなくなるとも聞きます。

 私たちはじっくり数千万円から億の単位の財産を作りたい方を対象に、記事を編集します。
じっくりとはなにか。

 「投資対象に何か教えてください。」と相談にみえた知り合いの山田さん夫婦に7003三井造船を示したのは99年の2月のことでした。
「貴方は既にお持ちですか。」と奥様は尋ねることも忘れませんでした。
私は6万株持っていますと話しました。

 半月ほどして、あるパーティでお会いしました。
「三井造船、20万株100円で買いました。」と奥様に告げられて少しびっくりしました。
それと同時に、度胸のあるこの女性はひと財産作るかもしれないなと、恐ろしいものを感じました。

 それから後は、読者の皆様ご存知の通り、翌年にはITブームが巻き起こり、ソフトバンクの株価が2000年2月18日には19万8千円をつけ、同日に光通信は24万1千円を記録しています。やはり友人の公認会計士がそのころ「ITの時代でっせ、これからは。ソフトバンクはいつでも三井造船やNKKを買収できる。株式交換で簡単にできる。」と言い放ちました。神戸大学を出て上場企業の決算にも関与している優秀な先生です。

 「数字的にはそうですが、製鉄所や造船所を持ち一流大学の工学部卒の優秀な技術者を大量に抱えている、名門会社がパソコンソフトの卸問屋さんと株式を交換するわけが無いでしょう。」と答えても
「いやいや、もうそういう重厚長大企業の時代ではないじゃないですか。」と確信しているようでした。税理士さんとか公認会計士さんが株式投資で失敗することが多いように思われるのは目の前に現れている数字に囚われて(とらわれて)会社を動かしている人間に目が届いていないからではないか、と思うときがあります。そういえば昔、NTTの公募株を購入して、マーケットで売り出し価格より大幅に値下がりしたのは、国に責任があると訴訟を提起した公認会計士の先生もおられたようですね。

 話を元に戻しますと、そのころわが三井造船は3月3日のお雛様の日に56円をつけています。当然、山田さんからは何度も「倒産することはありませんか。大丈夫ですか。」と問い合わせがありました。
「ちょろちょろする人は儲からないといいますよ。お宅は何も資金の入り用が無いのですから、どんと構えていたらよいのじゃないですか。」と小生は答えるばかりでした。

 三井造船は2000年のお雛祭りを底として、徐々に下値を切り上げて、2001年4月から急騰して6月には200円台にはいってきました。
そのころ、恒例の世界新聞大会が香港で開催され、参加するため友人の山田家一族と一緒に、小生の家族も連れて総勢6人で香港島のグランド・ハイアットホテルのリージエンシークラブに遊びました。香港島のリージエンシークラブはご案内の通り、グランドハイアットホテルの中でも、35階以上にある客室で35階にクラブ用のフロントがあり、フロントの横から吹き抜けの中にある螺旋階段(らせんかいだん)を上がってラウンジがあります。ラウンジで朝食と夕食前の食前酒が無料で好きなだけ、いただけるのは世界共通のリージエンクラブのお約束です。神戸新聞の山根社長夫妻、朝日新聞の上野オーナーご夫妻もお泊りでした。日本で言う応接セットのような豪華な椅子やソフアーが並んだラウンジで、窓から九竜半島とあいだに横たわる海を行き交う漁船を見下ろしながら
「朝からこんなりっぱな椅子で朝食をとるのですか」
と目を丸くしていた山田さんのお嬢様がいよいよ帰国となった日の朝
「このホテルのこのクラブが大変気に入りました。フロントの方も日本語は上手で親切ですし、また夫と来て泊まりたいと思いますが、VIPで無いと泊まれないのですか。」と尋ねました。

 「いやそんなことはないと思います。今回は香港新聞協会が部屋を取ってくれたのですが、特別な政治的な催しが無い限り誰でも泊まれます。部屋代をクレジット・カードで支払えばよいのですよ。」
「一泊4万5千円ぐらいだから、お父様の三井造船の儲けで1年間ぐらい泊まっていられますよ。2千万円ぐらい利益は出ていますから。」

 「それが、私も三井造船の株式を分けてもらおうと思っていたら、いつのまにか、105円から110円でほとんど全部売ってしまったのです。」
株価が長らく56円から75円をさまようと、買値の100円の大台を回復すると、やれやれと元値で売ってしまうということはしばしばあります。

 山田氏は帰りの機中で、こう述懐しています。
「2年我慢して4ヶ月早く売りすぎた。」
けだし名言でしょう。