(先週より続く)
湯之上 隆 氏が、半導体敗戦の敗因のひとつに挙げているのが、「元経営者たちが馬鹿だった」ということなのです。
この本を読んでしばらくして思い出したのが、スズキ株式会社 代表取締役会長兼社長の著作です。
「俺は、中小企業のおやじ」の、私にとっての白眉は以下の部分です。
「1円50銭の利益」
「10万円も値引きするなら、売らないほうがマシ」
2007年、スズキの売上げ高と利益について。
「売上高3兆円、年産300万台とすると1台あたり100万円の売り上げだが、利益は900億円だから、1台あたり3万円にしかならない。
さらに、1万~3万点ともいわれる自動車1台あたりの部品点数を仮に2万点とすると、1部品あたりの利益はわずか1円50銭にしかならない。
だから、1部品あたり1円50銭のコストを削減できれば、利益は2倍になる。
中略
軽自動車を1台買ってやるから10万円値引きしろというのはまったくもって無理な話。それでは7万円を寄付することになってしまう。」
3兆円企業の社長が、ここまで自社の原価を把握して経営しているのはまったく立派です。
新聞の用紙代、インク代、輪転機の償却、デジタル編集システムおよびコンピュータ・サーバのリース料等々を人件費を勘案していくと、
新聞1紙のコストは何円だ?
自問しました。改めて計算しました。それだけでこの本の値打ちは充分ありました。
この本を読んだ後、昨年12月インド北部を旅した時、インドの未整備な道路、大混雑の道路、低所得者層も多いお国柄に加えて、
12人乗り込んで走り回る、おびただしい数のスズキ・アルトの雄姿には感慨深いものがありました。
スズキは「技術では負けてない」というようなくだらないことは言いません。
排気ガス技術力がなくて、トヨタさんに救ってもらったと本に記しています。
本田宗一郎に加えて鈴木修という英雄をわれわれは持つ喜びがあります。