「日永うちわ」の伝統守る − 稲垣和美さん
【「うちわ作りは楽しい」と話す稲垣常務取締役=四日市市日永4丁目の稲藤で】
「いつか『四日市に日永あり。日本に日永うちわあり』と思われるようになりたい」と、その熱い胸の内を明かす。
日永うちわは県指定伝統工芸品で、女竹を丸いまま使用しているのが特徴。現在は、稲藤でしか製造販売していない。
23歳で結婚するまで、日永うちわのことはよく知らなかった。嫁ぎ先が、日永うちわの伝統を守る市内唯一の店だということも「あまり深く考えてはいなかった」と朗らかに笑う。
うちわのことは義父母に1から教えてもらった。竹の太さはまちまちなので、機械は使えない。1本ずつ手作業。「細く長く、絶やしたらあかん」という義父の教えは、いつしか自身の思いとも重なるようになった。時代を次につないでいきたい―。
「しなりがあって、風が丸いのが特徴。あおいでみれば良さが分かる」とうちわの魅力について話す。
約30年間、うちわと共に歩んできた。今では立派なうちわ職人であるとともに、新作うちわの企画も手掛ける。これまでに、持ち手上部の隙間に香り玉を入れた「香るうちわ」や、うちわの裏面に活性炭入りシートを貼った「消臭うちわ」などを商品化してきた。
数年前、ニューヨークやパリで開催した展示会が成功したことも、大きな励みになった。
「うちわ作りは楽しい。もっと勉強してセンスを磨いていきたい」と、満面の笑顔を見せた。