ベルリンの壁に描く − 宮武貴久恵さん
35歳の時、ベルリンの壁に壁画を描いた唯一の日本人画家。「暗闇からのパラダイス」と題した大作は、現在もシュプレー川のそばで見ることができる。
幼少の頃からすでに才能は片りんをのぞかせていた。最初に気が付いたのは、母親の萩子さんだった。2歳半の時、寝ている人物を描いたのを見て「何かが違う」と感じたのだという。
4歳から絵画を習い始め、7歳で油絵を描き始めた。8歳の時、二紀展に最年少で入賞したのを皮切りに、その後も数多くの賞を受賞してきた。「子どもの頃から絵を描くのは大好きで、楽しくて仕方なかった」と振り返る。
「幅広い視野を身に付けたい」と大学は法学部を選択したが、やはり絵は好きで、夜間の美術専門学校に通って絵を描き続けた。
卒業後はニューヨークへ美術留学。抽象画の世界に魅了され、14年間米国で絵を学ぶ中、30歳の時に描いた作品がきっかけで、ベルリンの壁に壁画を描くことになった。作品を仕上げるには大変なことも多かったが、その中で「絵を描くことの素晴らしさ」を再認識。貴重な経験だった。
38歳で帰国後も、国内外で数々の個展を開催し、積極的な制作活動に取り組んでいる。
「私にとって、絵は自分を育ててくれるもの。絵を通じて世界が通じ、コミュニケーションが広がる」と話し、「これからも人生の全てを絵の中に込めて、成長していきたい」と今後の作品作りに向けて、意欲的な姿勢を見せた。