三重県にプロサッカーチームができる意義③

 実際に三重県内のどこの地域にJリーグチームが存在すれば、多方面により多くのプラスの効果をもたらすことができるか?私は、人口が多く各産業も盛んな三重県北勢地域に1チーム、そして南勢地域に1チームが最適だと考えている。以下で、特に南勢地域が最適だと考える理由を3つ述べたい。

 1つ目は、三重県南勢地域には伊勢神宮を中心とした伊勢志摩国立公園やユネスコの世界遺産として登録された熊野古道など特有の観光資源や、「御食つ国」と称されるように海の幸・山の幸、さらに松阪牛などの食材が豊富にあるという点が挙げられる。敵地に応援にかけつけるような熱心なアウェーチームのサポーターにとって、遠征は応援観戦ツアーの側面を有している。スケジュールや予算の都合もあって全てのアウェー戦に駆けつけることができるという人は稀で、サポーターの多くは年間17のアウェー戦の中から応援に行く試合をチョイスするという人がほとんどだ。どのアウェーの試合に行くかの判断をする際に、近くに著名な観光スポットがあるか、美味しい食べ物があるかどうかという点は非常に重要な判断要素となる。南勢地域はその点を十分に満たしており、「選ばれるアウェー地」としての資格を有している。

 2つ目に、観光に訪れた多くのサポーターを受け入れるための観光関連設備が既に構築されている点がある。2016年のJ1リーグ18チームの1試合平均観戦者数は約1万8千人だったことからすると、大きく見積もって1万人が試合前後に観光客となると想定し同時に移動するとした場合に、それに耐えうる環境整備(道路網・宿泊施設・駐車場・公共交通機関等)が必要となる。観光都市である南勢地域では、それらがある程度整っており新たな設備投資が少なくてすむ、という点は重要である。

 3つ目は、県内随一の設備と立地条件を誇る「三重交通Gスポーツの杜 伊勢(三重県営総合競技場陸上競技場)」の存在である。現在、収容人数が合計2万4千人のこの施設は、高校総体(2018年)や国体(2021年)を控え、2017年度の完成を目標に陸上競技場の大規模改修を行っている。改修後はメインスタンド7千席の個別席が全面屋根付きとなり、これまでより観戦者に配慮された設備となる。J1リーグで活躍するチームができれば、この素晴らしい競技場を観客で埋め尽くすことも実現可能となるはずであり、週末には多くのサッカーファンが集う場所になるだろう。

中田一三
中田一三

なかたいちぞう 1973年4月生まれ。伊賀市出身。四日市中央工業高時代に、全国高校サッカー選手権大会に3年連続出場。92年1月の大会では同校初優勝をもたらし、優秀選手に選ばれた。中西永輔、小倉隆史両氏と並び「四中工の三羽烏」と称された。プロサッカー選手として通算194試合に出場。現在三重県国体成年男子サッカー監督。