伊勢新聞社の政経懇話会9月例会が20日、三重県津市大門の市センターパレスホールであり、共同通信社の杉田雄心政治部長が「今後の政局展望―どうする岸田さん」と題して講演した。今秋に岸田文雄首相が衆院解散総選挙を行う可能性について、「自民党の選挙区調整など準備は整っており、ゼロではない」と述べ、「10月の臨時国会での冒頭解散を警戒している」と強調した。
杉田氏は衆院解散について、党税調が防衛増税案の議論について「年末には行わない」と先送りしたことや、東京都選挙区の候補者擁立をめぐり、自民と公明が対立していたものの、8月に入り急速に修復を図ったことなどに触れ、「年内に解散してもいいように、準備や調整は進んでいる」と強調した。
また、野党情勢も指摘。日本維新の会の馬場伸幸代表が次期衆院選について、獲得議席は3ケタに届かず、立憲民主党と野党第1党争いを行うとの見通しを示していることを挙げ、「(与党側は)内閣支持率は下がっているが、政権を取られるような、大きく負けるような選挙でないと見ている」とし、「弱い野党」の存在も解散を後押しする可能性を示した。
一方で、広島サミット後の夏の解散は不発に終わっており、「周囲がどれだけいいパスを上げても、シュートを打たなければ解散にならない」と話し、岸田首相が決断するかどうかが焦点だと指摘。「岸田さんは解散の選択肢を手放していない」とも述べ、「10月に経済対策を策定し、臨時国会冒頭で解散するとの一つのシナリオがある」と話した。
岸田首相については「何を考えているか分からない人」との評で、与党幹部らも同意見だとした。首相の最大の関心事は来年秋の総裁選だとし、その布石となる内閣改造・党役員人事については支持率向上につながらず、最大派閥の安倍派の取り込みにも失敗したと指摘。唯一の成功は、ライバルの茂木敏充幹事長を続投させ、封じ込めたことだとの見方を示した。
また、立憲民主党にも触れ、「岡田克也幹事長は一貫して政権交代を目指しており、骨のある人」とした。立民と共産との関係について、「候補者調整はするが、選挙協力ではない」と述べるなど、分かりにくい面もあると指摘。その上で「内向きのことをアピールするより、少子化や子ども政策などをもっと訴えた方がいい」と述べた。
杉田氏は東京都生まれ。92年に共同通信入社。和歌山支局、大阪社会部、政治部、ワシントン支局などを経て2021年に編集局ニュースセンター整理部長、22年から現職。東大法学部卒。