▼「みんな飛び込んでますよ」が日本人を沈没船から避難させるのにもっとも効果ある呼びかけというのが「沈没船ジョーク」。アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄」、イタリア人には「女性にもてる」と笑わせる中で、かつて「愛」を強調していたフランス人には「飛び込まないでください」だというのが真顔にさせる
▼日本人のも、無心に笑えるというものでもないだろう。このジョークは世界的に有名らしいから「日本は欧米に比べて同調社会」というのは世界的に知られているのかもしれない。マイナンバーカードに関する共同通信の全国市区町村長へのアンケートで「事務負担重い」と感じている首長が90%に上った
▼相次ぐミスで国民の評判が岸田政権を揺るがしかねないほど悪化し、「突破力」が“売り”の河野太郎デジタル相がしゃにむに突き進もうとしているが「聞く力」の岸田文雄首相の足元はおぼつかない。そんな中、実務を担当する全国市区町村長が、メディアの質問に答える形で国に物申してきた。周囲を見回しながら、意見を言い始めた感がある。それならそうで、市民のためにもっと早く行動してもよかった
▼もっとも、高額なポイントが与えられるマイナポイント事業に国民は殺到し、自治体は対応で混乱した。こちらは「バスに乗り遅れるな」意識か。普及率が高い自治体には地方交付税の優遇措置もあった。損得いずれかの模様見意識はあったろう
▼沈没船ジョークも長い時間の中で呼びかけの言葉も変わっていく。日本人にも「お得ですよ」の声かけの方が、反応がいい気がする。