▼創造的構造物を作り上げるにはまず心にイメージを描くことが大切に違いない。世界的建築家の隈研吾氏は、熊野市に建設予定の児童養護施設「東紀州こどもの園」を設計するに当たり「開かれた」と「守る」の二つをイメージし両立させたという
▼それにより「子どもたちは安心して暮らせる。気持ちが癒やされ、柔らかさや温かさを感じてもらえる」狙いだ。これに対し、同施設建設計画の報告を受けた服部浩副知事は「これまでの児童養護施設とは全く違うイメージ」。この場合のイメージはそれまで心に描いていた形とは違うという“感じ”か
▼同席した河上敢二熊野市長は「児童養護施設の堅いイメージが柔らかくなれば、子どもたちの生活も大きく変わる」。こちらも、児童施設に対し“堅いイメージ”の固定観念があるということだろう。県、市ともに自ら作り上げた“閉ざされたイメージ”を破り、地域社会の中へ開かれた施設とするために協力できるかどうか
▼構想を起案し、資金提供したエレコムの葉田順治会長は3年前、関係者から「東紀州でも児童虐待がある」と聞いたのがきっかけという。津市の四歳女児暴行死事件とは関係なさそうだが、ないとも言い切れない。県内の施設や行政の状況など市場調査した上での決断だろうからである
▼熊本の赤ちゃんポストに入れていたことは、県は明らかにしなかった。市町だけでなく、他県との情報の共有がないことが、過去の虐待事件の原因になっている
▼何でも自分らだけで抱え込む閉ざされた体質が救える命を見殺しにした経験を生かさなければならない。