2023年7月28日(金)

▼民間の新人採用時期が早まる中で「(教員も)前倒しして少しでも挽回したい」。採用試験を来年度から約1カ月早める理由を福永和伸県教育長。「効果は分からないが、手は打たなければならない」。積極的な判断でもないらしい

▼教員のなり手不足対策として文部科学省が依頼してきたことを受けた。前倒し期間1カ月についても「調整がなかなか大変。これ以上は検討しなかった」。言われたからやるまでで、ベストな前倒しを検討したわけではないということだろう

▼教員のなり手不足は、ブラック企業まがいの過酷な現場が知られるようになったことが一番の原因だろう。にもかかわらず法で残業手当が支払われない。使命感だけでは心が折れ、過労死や自殺が多く報じられている。親も、そんなところへ子どもを送り出したくはないだろう

▼文科省は、そうした根本的問題の解決より先に、採用時期競争で民間への人材流出を食い止めようというのである。“でもしか教師”の存在は否定しないが、多くの教員の志や信念、誇りまで傷つけることにならぬか。福永教育長には、そんな思いもにじむ気がする

▼旧大蔵省時代、金融機関も巻き込んだ接待汚職事件というのが発生した。多くの逮捕者を出して大蔵省解体の主因となったが、翌年の同省には応募者が殺到した。峰渡りという高級官僚の昇給システムや20代で地方の税務署長になれる昇進システムが人気を呼んだ

▼狭き門を前提にした精神論での統治システムは崩れかけている。今後は「さまざまな状況を見て、考えなければならない」(福永教育長)。