【津】三重県津市一志町のボランティアガイド団体「一志町歴史語り部の会」(海野幸子会長)は29日、同町の一志農村環境改善センターで歴史講演会を開いた。郷土史家で三重郷土会常任理事の浅生悦生氏(77)=同市安濃町=が「雲出川流域の歴史を探る 古代から中世を中心に」と題し、時代ごとの出土品を手がかりに雲出川が歴史に果たした役割を考察した。
地域の歴史に理解を深めようと年1回専門家を招いて開催。昨年原始―古代をテーマにしたシリーズの第2弾で、近郊の約80人が聴講した。
浅生氏は時代順に、雲出川流域の寺院跡や出土した瓦、仏像などを紹介。一志地区や嬉野地区周辺に飛鳥―奈良時代の寺跡が数多くある理由について「肥沃(ひよく)な土地で奈良に近く古代からの文化ルートだった。壬申(じんしん)の乱や聖武天皇の頃に何らかの貢献をしていて寺院が作られたと考えられる」と推察した。
鎌倉時代の雲出島貫遺跡から外国の白磁など高級品が出土していることから「物資の流通拠点で港があったことが想定される。この後に発展する安濃津の港の一部だった可能性もある」と指摘した。
久居地区に残る鎌倉時代の石仏三体について「皆同じ年の8月に作られており顔も似ている。有能な石工集団がいたことを物語る」とし、古墳時代一志地域の井関石で石棺を作る集団がいたことと関連づけ「石工や石仏の伝統を持った地域だった」と述べた。