▼サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で、強豪ドイツを相手に決勝ゴールを決めた日本代表のFW浅野拓磨選手に、古くから知る同選手周辺では「あいつは持っている」という声が複数発せられた
▼四日市中央工業で2年生時に全国高校選手権で決勝へ進出。得点王となったが、司令塔の故障というアクシデントがなければ初の単独優勝もほぼ手中に収めていたと信じる。以来、新聞のスポーツ欄で活躍を追う程度のファンでしかなかったから選手としての評価はともかく、ここぞという時に得点をもぎとる能力は抜群だった。4年前のロシア大会で代表から漏れた時は、勝負を捨てたのかと思った
▼プロである以上、選手としての優劣は戦略、技能、体力などで決まるのは当然だが、たとえそれらのすべてで劣ったとしても、ここ一番で得点をもぎ取る能力にかけては、浅野選手の右にでる選手はいるまいと思ったからだ。勝負強さの域を越え、神がかり的でさえあった。そういう存在であることは、日本代表選手の資格としてすべてでなかったか
▼4年間の道のりは平坦ではなかったろう。選に入ったのも、おそらくぎりぎりではなかったか。当然のごとくスタメンではなく、後半の2番手でピッチに立ち、ほとんどワンチャンスのパスをものにし、難しい角度から針の穴を通すようなシュートをゴールに突き刺した
▼夢に描いた展開だ。W杯はまだまだこれからで、予選から決勝へと続く。が、10年前の高校選手権で悔しい思いをした以来の浅野ファンとしては決勝弾を見れただけで満足のような気がする。