2022年11月24日(木)

▼津市でボートレース事業の広告発注を巡る収賄事件が発生したのに続き、松阪市で市民病院の物品発注を巡る背任事件。事件名は異なるが、公金を自分の懐に環流させる点は同じで、「職員に緩みがあった」(前葉泰幸津市長)ことも共通していよう

▼違うのは、片や46歳の正規職員で、片や9年前に松阪市民病院の経営管理課呼吸器センターの事務員として採用された37歳の任用職員(非常勤職員)。収賄事件は、ボートレースCMの発注に便宜を図った見返りに金銭を受け取った単純な内容で、部下も供応を受けていた

▼日常的な安易さが感じられるのに対し、松阪市民病院の任用職員は、病院長の秘書的役割も務めていたという。実質経営する会社をトンネル会社にして、病院が発注する物品の手続きを通過させて利ざやを稼いでいた。広報誌もトンネル会社に発注先を変更していたという

▼発注にトンネル会社をかませる手口は目新しくもないが、かつて経験したのは経営者など発注組織の幹部が主導して、私的に組織を利用し私腹を肥やしていた。大学の理事長や大学病院の教授が半ば公然とトンネル法人や関連会社を使っていた。非常勤職員の場合は、これも津市であったことだが、長期間の勤務で信頼を得、発注業務を一任されてからだ

▼専門知識を要するが傍流に属する業務で、職員らが敬遠しがちな仕事でも背景にあった。松阪市はその進化形といえようか。背任の〝下克上〟でもある。非常勤職員の背任事件としては実に大胆で、あたりに人もなげだ。犯罪から世相が見えると言っては大げさか。