2022年11月3日(木)

▼明治憲法と現在の憲法との違いについて、前者は主権が天皇だったのに対し、後者は国民というのは、解説書の冒頭に登場するが、記述の形式は第1章が「天皇」であることはどちらも変わらない。現憲法で言えば第2章は「戦争の放棄」で、第3章になって、ようやく主権者の登場。「国民の権利及び義務」となる

▼「象徴」となった天皇の権威をなお維持するため、当時の政治家の苦心がこの記述の順番に現われているというのが憲法学者奥平康弘の説だ。文化勲章の発表が10月末で、表彰式は「文化の日」の3日。その3日は叙勲の発表日というのも、実態の権威の錯覚を巧みに利用する為政者の判断があるのだろうか

▼「文化の日」は言うまでもなく、元明治天皇の天長節、すなわち誕生日で、代が変わると明治節として四大節の一つの祝日となり戦後の昭和23年、自由と平和を愛し、文化を振興する日としての国民の祝日「文化の日」となった

▼対して、叙勲は勲功をあげた武人を賞する古代日本の律令制度が起源。明治以降、個人に勲等を叙する(授ける)制度となり戦後、生存者叙勲は停止されたが18年後に再開。平成14年は数字で表す勲等は廃止され、「勲等に叙す」から「勲章の授章」に性格は改まったが、叙勲の言葉は今に生きる

▼文化の日が国民の祝日に制定された翌年の24年のこの日、湯川秀樹の日本人初のノーベル賞受賞が発表され、日本中が沸いた。それから70年余、日本は防衛費増、迎撃力強化が議論されている。「文化の日」変わらず、時代とともにその色彩は変わっていく。