▼「情けは人のためならず」は人に情をかければやがて自分にも回ってくる、の意味だが、文化庁の平成22年度調査では「助けてやることは,結局はその人のためにならない」と回答を二分した。「見返りを期待している」と不快に思う人がいるともされる
▼コロナ禍で雇用不安を抱える労働者の相談に乗る企業外労組の窓口が先細りという。本体の労組の7割が人材、資金不足で運営難なためだ。企業内を含む全労組の組織率が昨年で前年比微減の16・9%
▼5、6年前、三重労働局と県内報道機関との懇談会で、全国紙支局長が「ブラック企業などに対し労組は機能しない。労働者の頼りは今や労働基準監督官」と話していた。労組の衰退ぶりを物語る。労働者の労組離れに原因を求められよう
▼順法精神を行動に掲げたことが衰退の一因になったのではないか。法の厳守を優先するなら労働相談は労働基準監督官で事足りる。政治運動で労組が対立してきた政府・自民党は何か事があるたびに「法に違反しているわけではない」と繰り返してきた。太刀打ちはできまい
▼小林貴虎県議で問題になっている旧統一教会系のUPF(天宙平和連合)にしても、自民県議が選挙支援を求めに行くと聞いたのはひと昔前だ。どんな組織かを尋ねたら「宗教関連だ。力はある」。利用しようとした意図はうかがえた
▼労働運動が業務妨害罪などで逮捕者が出ても、労組の支援も限定的。財界から政治に転じ、権力闘争に敗れた藤山愛一郎は「絹のハンカチが雑巾になった」と評された
▼まして絹のハンカチを目指しては勝てない。