<まる見えリポート>新築した三重県幹部職員公舎 建設費8000万円、入居は2世帯だけ

【新築した幹部職員公舎=津市観音寺町で】

三重県が旧幹部職員公舎の老朽化に伴い、昨年から津市観音寺町の県有地で新たな幹部職員公舎を供用している。メゾネットタイプの4世帯分だが、建設費は8千万円と財政難の県にとっては多額の支出だ。月々7万2千円という家賃も「一般的な相場としては、考えられないほど安価」(不動産会社)。一部の県職員らは「県民から無駄遣いだとの批判を受けかねない」と懸念する。一方、実際に幹部職員が入居しているのは2世帯だけ。県は「幹部職員に入居を呼び掛けて有効活用に努めたい」と説明している。

(海住真之)

 県庁から1キロほど南西にある閑静な高級住宅地に、新たな幹部公舎はひっそりとたたずんでいる。木造一部2階建てメゾネットタイプの住宅は県産材のしゃれた壁と植木で目隠しされ、まるでデザイナーハウスのような外観。隣には知事公舎がある。

1世帯当たりの延べ床面積は約90平方メートルで3LDK。内装にも県産材がふんだんに使われているという。それぞれの世帯に小さな庭があるほか、敷地内には駐車場もある。「この辺りにある高級な住宅にも引けを取らないたたずまい」(近隣住民)だ。

県は築約40年が経過した津市大谷町の旧幹部公舎が老朽化していたことを受け、平成27年に幹部公舎の新築を計画。一般競争入札には3社が参加し、津市内の建設会社が落札した。同年8月に着工して昨年3月に完成。昨春から供用が始まった。

この幹部職員公舎、県職員らの間では「ちょっと金をかけ過ぎなのでは」などと話題となっている。ある若手職員は取材に「はっきり言って必要性が感じられない。こういうことの積み重ねが財政難につながっているのではないかと疑ってしまう」と語った。

一方、県は「計画に当たっては支出削減に努めた」と説明する。旧幹部公舎のあった津市大谷町に立てることも可能だったが、比較的地価の安い観音寺町の県有地を建設先に選んだ。旧幹部公舎の土地は一般競争入札で約9300万円で売却したという。

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ただ、月々7万2千円という家賃も周辺の物件と比較すると破格。県管財課によると、国家公務員の基準に準じたというが、大手不動産会社のインターネットサイトでは、近辺にある借家の相場は11万円前後。駐車場代を別に請求する物件も多い。津市内で不動産業を営む男性は「7万2千円は安すぎる」と話す。

多額の費用を掛けて建設したにも関わらず、半数しか入居していないということも課題だ。現在、入居しているのは渡邉信一郎副知事と大野照文博物館長の2世帯だけ。利用されていない残る2世帯分の家賃は入っていない。

複数の幹部職員に入居の予定はないか尋ねたが「県庁の近くに自宅があるので必要ない」「同僚の近くに住むのはちょっと」と消極的な様子。「もともと幹部公舎は省庁から出向する職員のためにあるようなもの。空けておけば良いのでは」との声もあった。

「幹部職員公舎」とは言いつつも、入居に明確な基準がないという問題もある。管財課は「基準を作ることで、入居する職員がいなくなってしまえば本末転倒。特に基準を設ける予定はないが、利用してもらえるよう呼び掛けたい」と説明する。

建設や供用開始は報道機関に公表されていなかった。管財課は「県民に直接は関係がなかったため」と説明するが、財源が税金であることは言うまでもなく、建設の是非は別にしても公開する必要はあるはずだろう。「隠している」と思われたくなければ。