2022年6月10日(金)

▼黒田東彦日銀総裁が「値上げ許容発言」を衆院財務金融委員会で改めて撤回。「誤解を招いた表現で申し訳ない」と謝罪した。いささかの驚きを禁じ得ない

▼不適切な発言をしたことではない。危険察知能力が発揮されなかったようだからである。誤解を恐れずに言うと、昭和59年から二年間、県の総務部長として接した黒田さんは、話が微妙な問題になってくるといつの間にか姿を消していた、不用意にとどまる人ではなかった

▼数日前の参院でも、スーパーでの値上げの体感を問われ、買い物は基本的には妻で、自身「物価の動向を直接感じるほどではない」と答え、庶民感覚との違いを批判されている。現実の家計に踏み込む危険を承知していたはずなのに再び飛び込んでしまった

▼県が大蔵省(当時)から総務部長を招いていたころ、総務部長は財政部門、総務部次長が人事部門を担当していた。総務部長が人事に介入することはなく、とりわけ黒田さんは近づくことがなかったが、内心関心が強く、なぜ総務部長が人事から疎外されるのか不満だったのではないか、と幹部は推測していた

▼「金融通だそうですね」と聞いたら「大蔵省には金融通はたくさんいる。自分などおこがましい」。質問の軽率さを指摘された気がした。持ち前の反発心、家計での失点を家計で取り戻そうとしたのかもしれない

▼しがらみを一切無視し単純な解決を断行する行政手法だった。「割り切れるのは県への思い入れがないから」と見る中堅幹部もいた。バズーカと言われた金融緩和策は黒田さんらしい。家計への相次ぐ失言も。