▼20年ほど前、県立高教諭が地元自治会の分離運動の過程で差別事件を起こしたことがある。県教委の人権担当職員らは自分の中の差別心を見つめ直すことを理由に反省文の執筆や書き直しを繰り返し求め、部落解放同盟が主催する糾弾研修会への参加を強要。同会で徹底的に批判されればいいんだなどと口にした
▼教諭は何度も謝罪させられ、転勤辞令が出て、精神的に苦痛を受けたとして訴訟を起こした。名古屋高裁は差別を認定し、糾弾研修会の適法性は認めたが、県教委の人権行政は厳しく断罪した。反省文の強要、解放同盟主催の集会への強制参加は違法だとして、一審の慰謝料額を100万円増額し、330万円の支払いを命じた
▼同和対策を背景に、当事者団体である解放同盟の意向にすり寄る形で行政の問題点が指摘されない〝円滑な推進〟を目指した結果の行き過ぎた行為として、差別撤廃にも悪影響になると解放同盟県連幹部は顔をしかめた。元津市自治会長問題に関連し、詐欺罪に問われた元市人権担当理事に有罪判決が出た
▼「主犯格の意向に沿う形で犯行に関与した面はあるものの、保身を優先して犯行に及んだ」。本人は詐欺容疑を否認したが「主犯格の意向に沿う形」「保身を優先して」と見られたことについて大いに思い当たることはあるのではないか
▼三日は部落差別をはじめ、あらゆる差別問題の解消をけん引した水平社宣言百年の記念の日だが、いずれの差別も根絶することなく、部落差別は21世紀に引き継がれた。変わらぬ行政の象徴を元理事の判決に見るようで、ため息が出る。