2022年1月29日(土)

▼三重県四日市市の路上での男女殺傷事件で、県警の奥野英人次長が「必要な措置は講じてきたと考えている。重大な結果が生じたので、同種事案の対応をする時は、相談者の意向に沿ってきめ細やかな支援を行いたい」。必要な措置を講じたが、事件は防げなかった、ということである。「必要な措置」が「万全の措置」ではなかったということだろう

▼いわゆるストーカー殺人で、県警には苦い経験がある。平成23年に長崎県西海市で元交際相手の祖母と母親が刺殺された事件で、犯人の実家を管轄にする桑名署は、元交際相手の両親からストーカー、暴力被害の相談を受けていたにもかかわらず「西海(長崎県警)、習志野(千葉県警)両署に確認する」と回答しただけで放置し、犯人の男性が実家を飛び出したことを長崎県警に連絡しなかった

▼西海、習志野両署間では被害届のたらい回し、遅滞があり、のち3県警は連携の不備を認めて遺族に謝罪。警察庁長官は「警察は人の命を守る最後のとりで。高い敷居をまたいで警察を頼り相談に来る人々の立場に立ってほしい」と訓示した

▼四日市市の男女殺傷事件では、男女は5回警察署に相談していたという。数が多ければよいというものでもあるまい。受け付けは四日市と桑名の各署に分かれ、男女の車をパンクさせたとして逮捕・釈放したのが昨年12月。接見禁止命令を出したのが1月14日。殺害現場に駆けつけたのは四日市北署員で、犯人が自殺したとみられる火災現場には桑名署員

▼機動力を発揮したか。たらい回しではあるまいが、今後の捜査が待たれる。