2021年10月18日(月)

▼NHKの日曜討論で、自民党の甘利明幹事長が新型コロナウイルスのワクチン接種の速度が世界一だと何度も強調するのを見た。後手と言われるコロナ対策で、唯一誇れることだろうが、自慢できることかどうか

▼15日から新聞週間が始まった。今年のノーベル平和賞は2人のジャーナリストで、第2次大戦後初めて。ジャーナリズムの置かれている世界的危機に反応したためと言われる

▼受賞者の一人のロシアの新聞編集長の所属する新聞では6人が射殺されるなどで亡くなった。香港のリベラル紙が中国政府の圧力で廃刊に追い込まれ、米国でも、前大統領が新聞をフェイク呼ばわりし、先の同大統領選では票の不正操作の情報をきっかけに連邦議会議事堂襲撃が起きた。翻って日本。国境なき記者団の報道自由度ランキングで67位。先進国で最低レベル

▼総務省調査ではメディアの信頼度は新聞がテレビを押さえて首位。その新聞はネットを通じて読まれているというのが近年の特徴だ。一部分だけ切り取られたり、独自の解釈を加えられて事実がわい曲されるというのが本紙の受けた被害だ

▼権力が発するフェイクニュースは我が国でも安倍晋三元首相のツイッターにその恐れが感じられたが、改ざんとは別に一部だけ誇張するのもその一つ。感染への無防備、ワクチン開発・輸入の遅れ、医療体制不備などに続き、なりふり構わぬ接種促進があっての世界一だ

▼新聞は伝え切れているか。今年の標語は「答えなき時代のヒントを探る記事」。昨年は「危機のとき確かな情報頼れる新聞」。自信に陰りが見える。