▼ノーベル賞受賞の知らせに「驚いた」を連発して「物理学賞ですよ。気象予測で物理学賞とは」などと言っていた真鍋淑郎氏が、日が経つにつれ研究者と政策担当者との対話不足など、日本の頭脳流出問題を語るようになった
▼平成20年に同賞を受賞した南部陽一郎は米国籍で、二重国籍を認めない日本は、米国人とカウントしながらも、対象になった弦理論は日本在住時の成果だとして日本の業績として紹介するなど、滑稽な対応で取り繕ったが、真鍋氏も昭和50年に米国籍取得。今度はどんな取り扱いをするのだろう
▼日本人の頭脳流出が問題になったのも南部受賞から。最近は注目論文数や引用論文の低下などと結びつき、新聞は最初から頭脳流出例として報じていた。真鍋氏の思いは思いとして、報道側に言わされている側面もあるのではないか
▼真鍋氏が一時帰国して文部科学省関連の要職に就き、再び渡米するについてはあつれきなども指摘されるが、本人は「私は他人に合わせる性格ではない」と米国生活に満足している。日本人は「はい」と言って必ずしも「はい」にあらず。他人を傷つけたくないための「はい」があり、そういう生き方ができないというのだ
▼そういう人は日本の研究環境がどうあれ、米国の方が暮らしやいのだろう。五輪のメダル競争でもあるまいし、研究者の国籍、活動の場で頭脳流出というのも国際化に逆行する気がする
▼西沢潤一元東北大学長が「最近はノーベル賞の対象になりやすい研究に殺到する傾向」と言ったのは四半世紀以上前。この研究者がいて、この政府があり。