▼伊勢赤十字病院が精神疾患を持ちながら、身体疾患もある患者を受け入れる専門病棟「精神科身体合併症病棟(MPU)」を開設したのは、新型コロナウイルスの感染拡大と関係あるかどうか。昨年9月、70人の県最大規模のクラスター(感染者集団)を発生させた鈴鹿厚生病院で終息が長引いたのは、一つには精神科病院という特殊性だった
▼一般の患者なら何でもない移動でもパニックを起こしたりする。医師むろん看護師も専門性が求められる。人手不足となり、感染者を隔離、治療する転院先もなかなか見つけられない。系列の鈴鹿中央病院に感染が広がったのは、県の精神科医療の貧困を物語ってもいよう
▼コロナが社会の弱点を狙い撃ちにしてくる。ほころびだけつくろおうとすると全体のゆがみへと波及していく。感染症法に基づき、鈴木英敬知事が県内全ての病院に入院患者の受け入れや新たな病床の確保を求めたのはどうか
▼「入院すべき患者が入院できない事態が懸念される。総力戦で危機的な状況を乗り切りたい」と知事。三重大病院は、早速、新型コロナ以外の入院や手術を一時的に停止した
▼昨年度の医療費減が過去最大幅となった。手洗いなどのコロナ対策が奏功したという見方もあるが、受診控えの影響も指摘されている。がん発生が昨年から今年にかけて確実に減っているとして、専門の医師は検診控えが原因とみて実態が見えにくくなっている、と危機感を強めていた
▼感染のピークを乗り越えれば万々歳とはならない。知事に息長く県の健全な医療を構築していく考えは残っているか。