2021年8月24日(火)

▼かつて「影の市長」と言われ、今も隠然たる勢力を保つ菅義偉首相の地元横浜市の市長選挙で、首相が全面支援した小此木八郎前国家公安委員長が惨敗した。首相が旗を振ったカジノ誘致を「やめる」と公約し、はしごを外された形の現職が「継続」で応戦したが、その争点とは別の「カジノよりコロナ」を唱えた無名の野党系山中竹春氏が小此木氏に20万票近く差をつけて当選した

▼首相の自民総裁選、衆院議員選挙に政界に衝撃が走る。田川亮三、北川正恭、野呂昭彦の歴代3知事はいずれも注目選挙を国民の動向を見る指針とし自身の進退の参考にしてきた。鈴木英敬知事はどう見たか。選挙結果と関係ないが、三重とこわか国体・大会のまさかの中止へとカジを切った。「国体よりコロナ」を選択したのは間違いない

▼知事が打ち出したコロナ対策で最もインパクトがあったのは、昨年3月に県民に呼び掛けた「不要不急の海外渡航自粛メッセージ」だった。直後の県議会で「不要不急論争」が起きた。三谷哲央議員が「世間から見て不要不急でも、人生にとって極めて大事な旅行もある」。知事は卒業旅行中止を例に「今は感染拡大防止に重要な時期」

▼「国体・大会中止方向」はそれ以来のインパクトあるメッセージだろう。「不要不急」はコロナ急増のたびに呼び掛けられたが、効果は薄れている。「国体・大会中止」は「不要不急」を改めて県民一人一人に考えさせる機会になろう

▼経済政策を重視する知事にとって「苦渋の決断」であったことはよく分かるが、少なくともアナウンス効果は秀逸と言える。