<まる見えリポート>太平洋・島サミットTV会議 学生交流継続に希望

【パラオ高校との交流に向けて志摩近海の環境学習を進めるアクアデザインコースの生徒ら=県立水産高校で】

日本と太平洋島嶼(とうしょ)国との連携強化に向けた第9回太平洋・島サミットが今月28日の週に開催される。当初は開催地の三重県志摩市を中心に、参加19カ国の首脳来訪に向けた歓迎ムードで盛り上がりを見せていたが、新型コロナウイルスの影響でテレビ会議方式での開催が決定。落胆の声も多い中、学生を中心とした交流継続に希望をつなぐ動きもある。

同サミットは「国土が狭く、分散している」「国際市場から遠い」「気候変動等の影響を受けやすい」といった共通課題を持つ島嶼国との対話や連携強化を目的に、平成9年から3年ごとに開催。折しも今年は参加国の一つパラオ共和国と三重県との友好提携締結から25年、伊勢志摩サミット開催から5年という記念の節目でもあり、市民を中心に気運が高まっていた。

志摩市を含む志摩半島一帯は昭和21年に伊勢志摩国立公園に指定された。英虞湾や的矢湾を臨む複雑なリアス式海岸や温暖な気候が特徴で、豊かな自然の恵みを受けた水産業が盛んな一方、近年は海の環境変化が課題となっている。

中でも比較的浅い海域の岩場で海藻類が枯渇し、砂漠のような状態になる「磯焼け」は大きな課題の一つとされている。海藻類の枯渇はそれをエサとするアワビやサザエなどの貝類、すみかや産卵地とするイセエビ、カサゴなど魚類の減少にもつながる。伝統的な素潜りで知られる海女をはじめ、地元漁業者にとっては死活問題ともなる。

伊勢志摩国立公園管理事務所の半田俊彦管理官(45)は、「黒潮の蛇行による海水温上昇の影響ともされるが詳しい原因は特定できない。地域によっても違いがあり、木曽三川から流れ込む栄養素の減少やガンガゼの大量発生といった要素も考えられるが、いずれも推測でしかない」と話す。

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志摩市は昨年8月、観光庁や企業、市民団体など約50団体が加盟する市民会議を発足。持続可能な社会の実現を目指すSDGs未来都市推進室を事務局に、盛り上げを図ってきた。サミット記念事業として4月に開催したオンライン交流会では、伊勢志摩地域の学生と島嶼国からの国内留学生が、各国が抱える課題や取り組みを共有した。

温暖化への関心から交流会に参加したという県立志摩高校3年の尾﨑玲那さん(18)は「いろいろな問題を話し合うことで将来を考えるきっかけになった。自分でもゴミの分別を心がけるようになり、少しでも周囲に行動を広げたいと考えるようになった」と話している。

志摩高校では、サミット開催を記念したポストカードのデザインも担当した。当初作成を予定していたウェルカムボードのデザインを転用したもので、カードは市内小中高の生徒のメッセージと共に参加国や地域に届けられる予定という。

デザインは美術部2年の山本萌絵さん(16)による志摩の特色をコマ割りで表現したものと、同3年の柴原優璃さん(17)による地球を甲羅に見立てたウミガメを表現したものの2種類を採用した。柴原さんは「カードを通じて少しでもいろんな人に志摩を知ってもらえたら」と話していた。

県立水産高校では、故クニオ・ナカムラ元パラオ大統領から友好の証として寄贈された木造カヌー「ツクヨミ」の修繕が進められている。昨年12月に進水試験を実施したが水漏れなど修繕箇所が確認されたため、現在クラウドファンディングで資金調達を図りながら、生徒による操船体験への活用を計画している。

サミットを機に姉妹校のパラオ高校とのオンライン交流学習も計画されている。志摩近海の生物の飼育などを研究する同校水産資源科アクアデザインコースでは、2年生8人が交流に向けて鳥羽水族館でパラオやパラオオウムガイについての学習を深めてきた。

同コースの九渡春葉君(17)は「勉強するうちに自分たちの環境と似た部分もあれば違う部分もあることを知った。同年代が海についてどんな考えを持っているか、もし交流できたら意見を聞いてみたい」と語った。