2021年5月12日(水)

▼定例記者会見というのは、緊急会見などと単発の会見とは異なる雰囲気がある。報道側の立場からだが、問題が先鋭化していない中で相手が触れたくないことも聞く場合、詰問調ではなく、答えやすいムードと答えざるを得ない問いかけの間で工夫する。とはいえ、回答に対し、記者側が「やさしいなあ」とつぶやくのは珍しいのではないか

▼4月22日の知事定例記者会見である。小林貴虎県議の同性カップルの住所をブログ掲載したことについて問われ、鈴木英敬知事は性の多様性に「いろんな考え方を持つことを認め合うことは大事」と切り出し「私が申し上げる立場にありませんけれども」と石橋をたたきながら「必要なかったと思う」「撤回謝罪が望ましい」。その上で「(会派や自民党の)先輩とホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)をしながら仕事を進めるといい」

▼前日に小林県議は謝罪の意向を示し、所属会派の自民党県議団の津田健児団長も「反省している」と擁護していたが、その5日後、小林県議は同性カップルを誹謗中傷するSNS(会員制交流サイト)の投稿に賛同を表すいいねを押していたなどが明らかになり、津田団長も陳謝している

▼日沖正信議長が小林県議の謝罪を確認したという。今度は大丈夫か。岩本美砂子三重大教授が住所公開も性的指向を暴露する「アウティング」と主張したが、知事は何というか。前の会見でも対立の先鋭化を嫌い「現時点では、もう削除されましたので」。知事の一貫した穏便主義で沈静化に向かったとも言えようか。おや、この欄もやさしくなった?