新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴い、全国的に生活保護申請件数が増加しており、三重県の鈴鹿市も例外ではない。市の現状を取材した。
市によると、令和2年度の生活保護世帯数は866世帯、保護受給者数は1068人(同3年3月末現在)。前年度より53世帯、77人増加した。内訳は母子世帯がほぼ横ばい、傷病・障がい世帯が24世帯減少したものの、高齢者世帯が38世帯増加、失業などを要因とするその他世帯は37世帯増加した。保護率は人口千人あたり5・5人。
同年度の生活相談件数は2051件で、前年度の約3倍となり、大幅に増加した。同市保護課の仲道晃雄課長は「年明けから相談件数、申請件数ともに増えているが、高齢者の増加も目立ち、現状では一概にコロナ禍の影響とは言い切れない」と話し、「ただ、少しずつ増えてきているのは事実。リーマン・ショックの時を振り返ると、本当に影響が出てきたらもっと急激に増える」と分析する。
市は4月から生活相談のみの窓口を新たに設け、体制強化を図るほか、1月から生活保護制度の説明冊子「保護のしおり」も内容を見直し、分かりやすい文章や表現に変えた。
窓口で対応するケースワーカー4年目の木下之侑市さん(36)は「住居確保給付金など活用できる貸付の相談が多い。制度の延長期間が終われば、保護申請の増加を予測している」、ケースワーカー2年目の益川幸二さん(32)は「コロナの影響は間接的にあるのかもしれないが、まだ保護申請の波は来ていないと感じている」とそれぞれ話す。
市内の雇用情勢はどうなっているのか。鈴鹿、亀山両市を所管するハローワーク鈴鹿によると、2月の有効求人倍率は0・98倍。前年同期より0・34ポイント減少した。大平博章所長は「コロナ前は高水準が続いていたが昨年1、2月ごろから下がってきた。コロナ禍で厳しい状況が続いている」と話す。
鈴鹿商議所は、市内中小企業を対象に年2回の景況調査を実施する。担当の斎藤誉也さんは「飲食店は継続的に苦しい状況が続いている。対面接客業や旅行業の打撃も大きい」と話し、「『この状況が続けば廃業を検討する』『今後どうしたらいいのか見通しが付かない』という声も届いており、混沌(こんとん)とした状況が続く中、楽観はできない」と危機感を募らせる。
一方、元ケースワーカーの下井信夫さん(70)=同市岸岡町=は、平成30年に市民団体「鈴鹿生活と健康を守る会」を立ち上げ、生活保護についての相談や継続的な支援活動に取り組む。「最近は非正規や日雇いなど厳しい労働環境の相談者が多く、今まであった臨時的な仕事が減ってきているという話を聞く。今後も増加すると見ており、心配している」と話す。
20日は白子コミュニティセンターで定例会があり、会員7人が支援者の近況報告や、市の生活保護行政の課題などについて意見交換。5月の連休明けをめどに、末松則子市長に提言書を提出することを決めた。
下井さんは「本当に困っている人が申請を受け付けてもらえないという話も聞く。ありのままの現実を広く知ってもらうことが大切」と話す。
仲道課長は「(今後申請件数が増えても)いつも通りのことをやっていけば十分に対応できる。必要な支援が必要な人に届くことが大事であるとともに、税金を使っている以上、納税者が納得できる形でなければいけない」と話した。