▼新型コロナウイルスの変異株が県内で初めて確認されたことについて、鈴木英敬知事は従来通り対策を呼びかけたあと「過剰な不安は抱かず、犯人捜しのようなことは絶対に避けてもらいたい」。同感。だが、そのためには、県も「感染源、経路を解明して、県民が過剰に不安に陥る事態は避けたい」の言葉が抜けている気がする
▼先日、知人の隣人の兄弟(90歳代)がクラスターが発生した施設で死亡した。直接の親族を含め、そんな経験のない県民の方がむしろ多いのではないか。そこへ、子どもなど若年層への感染力が強いとされる変異株の出現である。親の不安は計り知れまい
▼政府の分科会の尾身茂会長は変異株が今後主流になるとし、警戒体制の強化を主張した。「警戒」と「過剰な不安」との間の違いとは何か。「警戒」はやみくもにできることではない。マスク着用、手洗いはじめ飲食店での多数の会食、大声で話す、など、対象が必要である。政府分科会が警戒強化を唱える中で、従来通りの対策で県民は安心できるだろうか
▼「犯人捜し」がよくないことも言うまでもない。誹謗中傷が発生する原因であり、対象にしてしまう。しかし、飲食店に出かけないよう、医療機関は高齢者に指導している。適切なアドバイスだろうが、「飲食店=犯人説」を吹聴していると言えなくもない
▼「犯人」が分かっていれば誰も犯人捜しなどしないものである。正しい「感染源」「感染経路」を明確にできないことが、県民を過剰な不安に陥れ、犯人捜しの声にすがる思いでつい耳を傾け、拡散してしまうのである。