<一年を振り返って>三重のサッカー界、くノ一、女子プロリーグ落選

【鈴木英敬知事(右)にスタジアム整備について協力を求める要望書を手渡す末松則子・鈴鹿市長(中央)と鈴鹿ポイントゲッターズ運営会社の吉田雅一社長=10月28日、県庁で】

来年9月に開幕する日本初のサッカー女子プロリーグ「WEリーグ」の初シーズンに参入する11クラブが10月に発表され、伊賀市を拠点になでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)一部に所属する「伊賀FCくノ一三重」は入会を申請したものの選出されなかった。母体は昭和51年から上野市(現伊賀市)で活動する「伊賀上野くノ一サッカークラブ」。平成元年に始まった日本女子サッカーリーグに第1回から参加してきた女子サッカーきっての古豪チームの歩みを妨げたのはスタジアム問題だった。


チームを運営するNPO伊賀FCくノ一は伊賀市内で会見し、選出から漏れた主な理由について、ホームスタジアムの伊賀市立上野運動公園競技場がリーグ基準を満たしていなかったことと説明した。

同競技場は2002年日韓サッカーワールドカップに出場した南アフリカ代表チームのプレキャンプ地として使用されるなど市内随一の競技場として親しまれてきた。くノ一のホームグラウンドとして長年使用され平成25年にはなでしこリーグの試合開催基準に合わせた改修を済ませた。

WEリーグの試合を開催するには、新たに「個席5千席以上」「大型映像装置の設置」などの基準を満たす必要がある。このため、男女問わずプロサッカーの試合を開くことができるよう、伊賀市サッカー協会などが市議会に「Jリーグ基準のスタジアム整備を求める」請願書を提出して可決されたが、多額な費用がネックになり、具体化に向けた行政の動きは鈍い。

WEリーグはアマチュアで存続するなでしこリーグの上位に置かれ2年目以降、新規参入によってクラブ数を増やしていく方針。くノ一は今後アマ国内最高峰リーグの位置づけとなるなでしこリーグに残留しながら、WEリーグ昇格を目指し県などにも施設整備への協力を呼び掛けるとしている。


一方、県内の男子サッカー界ではJリーグ参入に向け長い間懸案だったスタジアム問題に一定の方向性が示された。Jリーグの規格を満たすサッカースタジアムの建設を官民一体で進める目的で発足した「Jクラブ誕生とスタジアム建設を推進する県民会議」が1万人以上を収容するJ2(Jリーグ2部)規格以上のスタジアムを想定していることもあり、J3規格のスタジアムについてはクラブ主体で整備を目指す動きが続いているのだ。

今年J3規格のスタジアムに生まれ変わった東員町スポーツ公園陸上競技場は、施設の指定管理者を務めるアマチュア最高峰リーグ、JFLの「ヴィアティン三重」主体で改修工事を行った。同じJFL所属チームの「鈴鹿ポイントゲッターズ」も県営都市公園鈴鹿青少年の森にJ3規格のサッカー専用スタジアムを整備する予定で、令和3年5月に着工し、建設費は自己資本やスポンサーからの資金で賄うとしている。

ヴィアティン三重の運営元「ヴィアティン三重ファミリークラブ」の後藤大介社長は「全国的にもJ3規模のスタジアムはクラブの自助努力で実現するのが流れ」と話す。プロスポーツ空白県の返上に向けて、各クラブのフロント陣の手腕も問われている。