2020年12月26日(土)

▼朝日新聞の25日付け社説は「『桜』刑事処分 政治責任は極めて重い」だった。産経新聞「主張」も「安倍氏秘書を起訴 政治家として責任は重い」。政権へのスタンスがしばしば両極端とされる両紙が足並みをそろえた

▼「桜を見る会」の前夜祭費用の不足分を安倍晋三前首相側が支払っていたことに対し、東京地検が前首相秘書を略式起訴、前首相自身は不起訴にした問題である。「知らなかった」で済むのかと小気味よいが、検察が不起訴を決め、安倍前首相が記者会見で弁明した当日は、緊急事態宣言中の賭けマージャン問題で不起訴(起訴猶予)になった黒川弘務元東京高検検事長を検察審査会が「起訴相当」と議決した日でもある

▼掛け金が常識内で、社会的批判も浴び、辞職していることを検察は理由にしたが、検察審査会は「的外れ」とにべもない。参加した産経2人、朝日1人の3人の元記者らの不起訴も不当として再捜査を求める。権力の監視はメディアの責務であり、元首相の追及は当然として、検察審査会の議決も、黒川元高検検事長の「起訴相当」を報じるだけではなく、自社の元記者らの「不起訴不当」も、当事者として読者が納得するような釈明があってもよかったのではないか

▼朝日、産経とも実名報道を社是とする頼もしい同志である。しかし、両紙とも所属記者名は匿名で足並みをそろえた。監視が社会的存在意義として批判する側が自身の不祥事にはまた別の扱いがあるかに見られては、信頼も揺らぐのではないか

▼「社会的責任は重い」のか「軽い」のか、社説で読みたかった。