三重県ホッケー協会が設立した県内唯一の社会人チーム「三重クラブ」女子チームが今月、岡山県で開催した全日本社会人ホッケー選手権大会で創設後初めて、日本リーグチームから得点を挙げた。2021年の三重とこわか国体に向けた強化活動に加え普及活動にも励む。ホッケー不毛の地と言われる三重で競技を根付かせる地道な取り組みが続く。
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三重クラブは三重とこわか国体に向けて県ホッケー協会が再度立ち上がった2013年以降に発足した。三重とこわか国体の競技会場が名張市に決まったことを機に、地元国体での上位入賞を目標に、メンバー、練習環境の整備が急ピッチで進む。
発足当初は県内在住在勤のホッケー経験者だけで活動していたが、現在県などが行うトップアスリート向け就職支援制度も活用し、県外から県内自治体、企業などに就職した現役世代の選手も含む男子約30人、女子約20人が所属している。
このうち女子は18年に加わった元ロンドン五輪代表の津田志穂監督兼選手(31)=島根県出身=、16年ジュニアワールドカップ出場などの実績を持つ19年加入の森川芽栄主将(24)=奈良県出身=に続き、今年春一挙9人が加入した。
大半が伊賀・名張市内で生活し、19年オープンの名張市民ホッケー場「はなの里スタジアム」を主な活動場所としている。新型コロナウイルス蔓延でスタートは出遅れたが、感染が落ち着いた夏以降ほぼ毎日練習に取り組む。今月、岡山県で開催の全日本社会人選手権は今年最初で最後の腕試しの機会だった。
女子は日本リーグ所属の4チームと三重クラブのようなクラブチームの計8チームのトーナメント形式で行われ、組み合わせの結果、三重クラブは初戦でいきなり昨年の準優勝チームで日本リーグ勢のグラクソ・スミスクライン女子ホッケー部(GSK=栃木)と対戦する機会に恵まれた。
試合は1点を争う好ゲームになった。0―0のまま迎えた第2クオーター。津田監督の反則を誘うプレーで得たペナルティコーナーの好機で大卒ルーキーの三島結花選手(23)がシュートを決めた。
その後前掛かりで攻めるGSKに1点を返されたが勝ち越しは許さず1―1で規定時間を終えた。サッカーのPK戦に当たるシュートアウト戦の末敗れたが、「実業団チームから先に点が取れた意義は大きい」(津田監督)、「点を取って相手がピリピリしたのを感じた。試合をしていて楽しかった」(三島選手)と手応えはつかめた。
三重とこわか国体は日本リーグ勢の一角を崩して3位以内を目指す。大卒ルーキーの1人でユース日本代表入りの経験を持つ小林はな選手(23)=山形県出身=は「学生時代に比べて練習量は少ないが国体で結果を出し、チームメートや職場の人に感謝の気持ちを伝えたい」と話している。
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津田監督、三島選手は島根県奥出雲町の出身。1982年のくにびき国体で競技会場となって以来全国屈指のホッケーどころとなり、これまで4人の五輪代表を輩出している町で幼いころから自然に競技に親しんできた津田監督は国体を機にした三重県内の競技普及を目指している。
今年春には小中学生向けのジュニアチーム、ナバリスタホッケークラブが発足。来年春には三重クラブの選手らも指導に関わった名張ジュニアスクール育ちの中学生が市内唯一のホッケー部を持つ名張青峰高校に進学する予定だ。
「国体後も継続してホッケーができる環境をつくっていきたい」と夢を語る津田監督。三重クラブも「ここで止まるチームでなく成長し続けるチームであって欲しい」と願っている。
【仕事後に名張市民ホッケー場「はなの里スタジアム」に集まり練習を行う三重クラブの選手ら=同市百合が丘西で】