2020年9月26日(土)

▼コロナ禍である。対策に予算が投じられ、税収の減少が見込まれる。水力発電事業清算金を一般会計に繰り入れ「県民サービスの低下を招かず」(鈴木英敬知事)ということに多くの県民は異存あるまい。しかし、その使途が「国体を成功させるためにどうしても必要」(同)と言われると異論も出てくるのではないか

▼もっとも、県議会が「到底理解できない」(濱井初男県議)などとこれまで繰り返し批判していることとコロナとは、直接関係あるまい。国体充当方針を知事が明示したのは2年も前で、以来議会の批判は相次いでいた。国体関係費用は117億円と見込まれているのに、県の積み立て金は13億円。初めから水力発電事業清算金を当てにしていると思われていたからである

▼そもそも水力発電事業売却は議会の提言で始まった。赤字体質の県企業庁の民営化が主眼で、その中で水力発電の民間譲渡や水道事業の市町移管が論じられた。県は、うち中電相手で交渉しやすい発電事業だけ実行した

▼売却代金105億円は県にとってはタナからぼた餅である。なのに、タナから落としてやった議会には何の相談もなく、国体関係充当を先行させた。すなわち落ちてきたぼた餅を1人でおいしくいただこうというのである。宮川流域の環境保全をはじめ子育て支援や少子化対策など、使い道はたくさんあるのになぜ全額国体関係なんだ、と言いたくもなろうというものである

▼知事は25日の議会質疑で「新型コロナの影響による税収減」を理由に加えた。反対しにくいお題目であり、議会のいら立ちは募ろう。